花組「アルカンシェル~パリに架かる虹~」

壁の飾りをかえました。

花組「アルカンシェル~パリに架かる虹~」2024年2月10日-3月24日 宝塚大劇場

 柚香光さんと星風まどかさんトップコンビ退団公演です。1本物なので柚香さんの華麗なダンス見せ場が少ないのではと心配でしたがそれは杞憂、レビューシーンがふんだんに盛り込まれています。プロローグから王道レビューシーン、柚香さんは黒燕尾とシルクハットが似合いますね。続くピエロ・ダンスも柚香さんの表現力がスゴイ!道化師の悲哀が伝わってくる。そしてこのピエロは後の伏線にもなるのです、しっかり観ておいてください。

 星風まどかちゃんは宙組から長年トップを務め堂々の風格、そして安定の歌唱で聴きごたえあります。なにより柚香さんを慕う仲良い雰囲気に満ち、観ている者を幸せにしてくれます。

 パリ占領軍文化統制副官フリードリッヒを永久輝せあさんが快演。ナチス軍人だが、純粋に音楽と演劇が好きで、アルカンシエル劇団に好意的なのが良く伝わってきます。次期トップさんに決まっていてこれからの活躍も楽しみです。

 ドイツ文化統制官コンラート・バルツァーは専科から凄腕の輝月ゆうまさんが演じます、サイコパスなナチス将校の演技が光ります。輝月さん巧すぎ!そして部下のナチス親衛隊マックス(紅羽真希さん)とエミール(泉まいらさん)が冷酷ナチスの面と、コンラートに頭が上がらない部下というコミカルな面があっていい味なのです。なお、紅羽さんはダイナミックなダンスで魅せる方で、ナチスのソ連侵攻場面やフィナーレでの踊りに注目。またエミールの泉まいらさんは後でナチスのコルティッツ総司令官(1)に役替わりします、これまた燻し銀の演技です。宝塚大劇場だけでの役なのでぜひご注目ください!

 今回退団される帆純まひろさん、華麗な美人男役、劇団員としてソロ歌唱ありピエロ姿での前転あり見せ場が多くありました。銀橋で柚香さんから「一緒に舞台を作ってきた仲間じゃあないか」とねぎらわれる場面が涙を誘います。

 花組は注目のジェンヌさんが多いです、最近とくに愛乃一真(まのかずま)さん、この人の踊りに双眼鏡が釘付け。速い動き+ピタッと静止+抜群の体幹安定、そしてポーズ時の角度、とにかくスゴイです、ぜひご注目ください。レジスタンスの踊りがキレッキレです、ぜひご注目ください!ラテンナンバー・ココナッツパラディでは手に持つマラカスを止めるタイミングそして腕と脚の角度までが完成された芸術です。

 なお若手の光稀れん(こうきれん)クン108期もご注目ください!下級生ながらすでに男役の貫禄があるのですよ。今回はアルカンシエル劇場の冒頭シーンで7(セット)シャルマント(=7人組ロケットダンサー、赤色ですぜひ見つけて下さい!)、そしてナチス兵士、ホテル舞踏会の客、パリ解放時の市民等、チョイ役ばかりなのですが、存在感が大きいのです。皆様ぜひ温かく応援してください!光稀れん(こうきれん)クンです。

 魅力たくさんの花組公演アルカンシエル、機会がありましたらぜひご覧ください。(2024.2.21院長)

(2024.3.23 追記)

サヨナラショー、観ました。とくに黒燕尾のフィナーレがよかった。柚香さん本当に伝統的黒燕尾が凛々しく合っておられます。これが観たかった、感無量です。

 

(1)コルティッツ司令官は実在の人物で、ヒトラーによるパリ破壊命令をはぐらかし、結局爆破しなかった。パリを救った男として後世に名を残し、後に映画化されました(2014年「パリよ、永遠に」)。

 

細かい見どころ

(1)主人公マルセルが住む質素な部屋。梁が斜めであること、壁が石のままであることからパリのアパルトマン最上階の屋根裏部屋、つまり安い部屋にしか住めないことを表しています。構造上、最上階は天井が斜めで部屋が狭いことが多く、また昔の建物はエレベーターがなかったので昇り降りが大変、そのため最も家賃が安い階なのです。

(2)劇中に大道具(書割)の裏面が出てきます。上にcôté cour、下の方にcôté jardinと書いてあります。これは上手・下手の区別です。上手はcôté cour (コテ・クール)、下手が côté jardin (コテ・ジャルダン)です。

(3)劇中背景のパリ市地図に御注目ください。道路や施設が昔の名称なんです。パリ旅行したことがある方、見たことのない地名が載っています。双眼鏡で確認してみてください。

旧Avenue(以下Av.) Alexandre-III(アレクサンドルIII世通り、ロシア皇帝)→1966年~現在Av. Winston-Churchill(英国チャーチル首相)、なおアレクサンドルIII世橋は「アナスタシア」で重要な場所でした。

旧Av. d'Antin(劇中の地図)→1918第1次世界大戦後からAv. Victor-Emmanuel III(イタリアの王)→第二次世界大戦では敵国になったので戦後に名称変更→1945年Av. Franklin D. Roosevelt(米国大統領ローズヴェルト)、この通り沿いに戦後の名レストラン・ラセールがあります。

旧Av. d'Alma(アルマ通り、1854クリミア戦争アルマの戦い勝利記念)→1918年~Av. George V(イギリス王ジョージV世、第一次世界大戦で英国とフランスが同盟国で戦った、ジョルジュ・サンク通りは今は高級ブランドと高級ホテル(フォーシーズンズ・ジョルジュサンク)の通リです。

 劇中の地図には出てきませんがアイゼンハウアー将軍通り(ノルマンディー上陸作戦の司令官,、後に米国大統領)もあります。フランスは戦争のとき英国と米国に助けてもらったので恩義に感じているということなのでしょう。

(4)ドイツ軍総司令部はホテル・ムーリス(Le Meurice)にありました。チュイルリー庭園の向かいRue de

Rivoli (リヴォリ通り)にあり。いまもパリを代表する高級ホテルとして輝いています。

 

(追記2024.3.23)

カテゴリ 宝塚歌劇

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