コード進行が同じ「ビーチタイム」

毎日暑いですね。壁の飾りをかえました。

TUBE「Beach Time(ビーチ・タイム)」昭和63年(1988)4月

作詞:亜蘭知子、作曲・編曲:織田哲郎

夏が来るとTUBEを聴きたくなりますね。

さてこの「Beach Time」は松田聖子「青い珊瑚礁」のカラオケで歌えることをご存知でしょうか。それはコード進行が全く同じだからなのです。この2曲が似ていることは昔から言われていて、いわばカラオケでのお遊び用ネタくらいに考えられていました。街の噂、つまり音楽好きアマチュアの間では「これはわざとやってるだろ」「いや偶然にちがいない」など色んな意見がありました。

実は当時のプロデューサー長戸大幸氏は意図的に完全にパクっていたと語っておられます。2021年エフエム滋賀のラジオ番組で長戸氏本人が、「TUBEのシングル曲「Beach Time」(1988)を、松田聖子の大ヒット曲「青い珊瑚礁」(1980)を模倣して制作したことを、明かした」のです(1)。長戸氏は「青い珊瑚礁」の元は有名な映画曲「慕情(Love Is A Many-Splendored Thing)」であり、さらにその源流はプッチーニ「蝶々夫人」であることを分析されています。それならば「青い珊瑚礁」に徹底的に似せて作ってみようとしてできたのがTUBE「Beach Time」というわけなのです。

聴いていただければわかると思いますが、アイドル曲をコード進行だけ流用したとはいえ、完全にTUBE独自のサウンドを作りだしています。そこには単なる借用というよりも、8年前のアイドル音楽は既に古いものとしてこれを完全に咀嚼し、一段高い視点から俯瞰して自由に使えているということです。これは相当な音楽的素養がないとできない技であります。すなわち日本のポップスがかなりの進化を遂げたことを表しているのだと思うのです。

実際、1980年からのアイドル黄金時代が終わり、1985年頃からバンドブームを経て日本の音楽は新世代になってゆき、80年代後半にはJ-POPという概念が確立しました。この時期から洋楽をあまり意識せずとも独自のポップスを作れるミュージシャンが激増しました。例えば長戸氏の音楽事務所ビーイング(2)の作りだした一連のアーティスト・作品がそうです。明治時代から始まった日本ポップスは長い間西洋音楽を自分のものにしようと努力を続けてきました(3)、昭和の終わりになってついに自国オリジナルの音楽を作り出せたように思います。

2023年の猛暑、日本ポップスの歴史に思いを馳せながら「青い珊瑚礁」と「Beach Time」の聴き比べして涼んでくださいませ。

まきの内科クリニックは8月11-16日まで夏休みをいただきます。

よろしくお願い申し上げます。 (院長 2023.8.2)

 

(1)https://being-music.net/2227/

TUBE「Beach Time」は松田聖子「青い珊瑚礁」を完全にパクった曲だった 長戸氏語る

(2)BEing 音楽事務所、85年TUBE、88年B'z、91年Mi-Ke、ZARD、川島だりあ、T-BOLAN、WANDS、92年大黒摩季 など

(3)「大瀧詠一のニッポンポップス伝」に詳しく歴史が語られています

カテゴリ 音楽

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