腕の傷痕で年齢がわかる~予防接種に歴史あり

レコードを見ていて気付いたことがあります。
ランちゃんとスーちゃんの左腕に傷痕が写っています。ある世代なら、種痘かな!と思い浮かべるでしょう。でもよく考えると違うのです。
種痘は恐ろしい感染症・天然痘を防ぐ予防接種です。明治42年以来種痘を義務化した結果、天然痘は激減し、昭和31年以降国内の発症はなくなりました。昭和51年に種痘義務化は中止、昭和55年世界中の天然痘が撲滅され種痘は廃止されました。
1歳と6歳頃に接種しますから、昭和49年以前生まれは痕があり、昭和50年以降生まれの人にはないことになります。ですから種痘はよく年齢当てに使われます。

ただ例外を除き右腕接種だった(1)ので、この場合左右が違います。
では写真の傷痕は何か?。他に腕に痕を残す予防接種といえばBCGです(2)。調べてみると、昭和42年より前は皮内注射で左上腕に接種していたことがわかりました(3)。これは種痘に似た円形痕が残ります。そして昭和42年以後は現在と同じ管針法、9個の点状痕が残るいわゆるハンコ注射にとってかわったのです。
伊藤蘭さんは昭和30年、田中好子さんは昭和31年生まれ、左腕の痕はBCG皮内接種なのでしょう。そして写真に写っていない右腕には種痘の痕があるはずです。

予防接種にも歴史がありますね。(院長)

 

(1)接種部位は厚生省「予防接種実施規則」で昭和33年「右上腕伸側又は右肩部」、その後昭和39年に「原則として右上腕伸側」と決められていました。それ以前も同様に行われていたと推測できます。
(2)BCGは結核予防を目的としたワクチンです。
(3)厳密にはBCGの接種部位は「上腕」とされ、左右指定はありませんでした。種痘が右腕指定なので自動的にBCGは左腕になったのでしょう。

 

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