昭和6年 作曲 古賀政男、作詞 島田芳文、歌 藤山一郎
春の歌と言えばこれですな。古賀政男さんが明大を卒業する春、学友と満開の桜を楽しんだ帰りに作曲したそうです(1)。流麗なマンドリン合奏からは満開の桜吹雪が目に浮かぶようです。
クラシック声楽家である藤山一郎さんの正確な歌唱が、生き生きとあふれる若さを表現します。この歌の持つ明るさは藤山一郎でしか出せないといわれ、実際このあと持ち歌にした歌謡曲歌手は現れませんでした(2)。後年の天才美空ひばりも表現できなかったそうです(2)。この曲をものにした人と言えば、矢野顕子の新解釈(昭和51)を待たねばなりません。
古賀政男といえば感傷的メロディーの印象が強いですが、青春を高らかに謳いあげる曲や賑やかで明るい曲も多くて、私はこっちの方が好きなのです。
なお、写真のレコードは中学時代に小遣い叩いて買ったものです。当時でも大変な中古でしたよ(笑)。(院長)
「丘を越えて」に関して、間奏に瀬戸口藤吉の「軍艦マーチ」(明治33)が使われていること、そして「軍艦マーチ」と「丘を越えて」を合わせると・・・「ホンダラ行進曲」(昭和38)のイントロになる、というのが大瀧詠一さんの分析です(3)。ホンダラはナンセンス系解釈、矢野顕子は脱力癒し系解釈でしょうか。
(1)古賀政男「自伝わが心の歌」展望社
(2)菊池清麿「評伝 古賀政男」アテネ書房
(3)大瀧詠一「大瀧詠一の日本ポップス伝 第3回」NHK-FM 1995.8.9放送