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2025年

2月

26日

演歌イメージ固定化の頃「北の宿から」

壁の飾りをかえました。

都はるみ「北の宿から」昭和50年(1975)作詞:阿久 悠、作曲:小林亜星

ここ数回「演歌」の歴史について検証しています。

「演歌」という用語、概念は昭和40年(1965)頃から使われ始めました。

65年「函館の女」なんてヨナ抜きながら演歌というよりアメリカンポップ要素が多く、69年藤圭子「新宿の女」はアウトローなイメージ、71年「よこはま・たそがれ」はポップス的、「わたしの城下町」は「美しい日本」「清廉な女性」というクリーンなイメージ、と色々実験を繰り返していたわけです。

しかし75年頃になると、演歌のイメージは固定化されつつあるということが見て取れます。取り扱うテーマは「寒い北国」「耐える女性」「男女の別れ」「夜の盛り場」「ひとり旅」などなど。

阿久悠の詞はその演歌イメージを表しているように見えます。なお「別れた男性のセーターを編む」というのは別れに決着をつける儀式であり、「死んでもいいですか」は自嘲気味のひとり芝居というイメージで「僕は強い女を書いたつもりだった」とのことです(1)。

なお楽曲は典型演歌調ながら、小林亜星の技が随所に見られます。楽譜を見ますと、ヨナ抜きでもニロ抜きでもなく、通常の短調です、原曲キーF#mは悲しさを演出するには良いそうです。小林亜星によると「ヒット曲の秘訣として、歌い出しは平坦なリズムを繰り返し、サビの部分で一か所だけ高い音の山を築くことだ」(2)ということなのです。なるほどその通り。この曲前半は繰り返しです、とはいえ「寒さがつのります」の所はIVの代理コードでVI→VIIそしてIの代理でIIIを使い不安・緊張感をつくっています。

そしてサビの「あなた恋しい」で一気に高音、そしてラストの「北の宿」ではツーファイブ(IIm7→V7→I)進行!で見事に翳りある締めを演出。なおこの西洋短調音階+ツーファイブは「津軽海峡冬景色」でも使われているのです。

都はるみの歌唱もこの曲に抜群に合っております、力強いこぶし、うなり、そして高音、すばらしい。

この時期75年頃が、だいたい「演歌」のイメージ出来上がってきて、そして演歌以外の歌謡曲(アイドル、ポップス、フォーク、ニューミュージック)から離れていった時期なのだと思います。

だってそうじゃないですか、夜の盛り場、酒、耐え忍ぶ女性なんてテーマ、若い人の生活には関係ないので共感されませんよ。当時は若年者の数もむちゃくちゃ多かったし購買力も大きかった。レコード会社としては若者マーケットはアイドルやフォークなどに任せ、「演歌」については中高年対象にターゲットを絞ったということなのでしょうか。このあと「演歌」は固定化し独自の発展をしてゆくことになります。

皆様、今でいう演歌イメージが固まってきたころの名唱、機会がありましたらぜひお聴きください。しかしやはり寒い冬はステレオタイプに「演歌」の気分なのかもしれません、今年は特に寒かったからね。春になったら演歌はいったんお休みにしようと思います。 (2025.2.26院長)

 

(1)Wikipedia 「北の宿」から、 阿久悠 『愛すべき名歌たち』1999年 岩波書店

(2)刑部芳則『昭和歌謡史』2024年 中公新書 p.330

 

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2025年

2月

12日

実験的演歌「わたしの城下町」

壁の飾りをかえました。

小柳ルミ子「わたしの城下町」昭和46年(1971)4月作詞:安井かずみ、作曲:平尾昌晃

 「演歌」という言い方は1969年頃から広がり始め、アウトロー的テーマを持っていました(例:藤圭子)。のちに演歌という概念が集約され固定化が進むのですが、そこに至るまで、演歌は多種多様な実験的試行を繰り広げました(例:71年「よこはま・たそがれ」ポップス演歌)

 今回は71年「わたしの城下町」が演歌であることと、そこにある実験的側面を検証してみます。この曲を演歌でないと感じる方もいるかもしれません。でもそれこそが実験が成功したことの証なのだろう思います。。

 まず演歌的な要素。メロディーはAm(イ短調)のヨナ抜き音階、ただし厳密には四番目の音D(レ)が3回だけ登場します、G(ソ)は0回、なので「ほぼヨナ抜き」。コード進行は基本のI-IV-V-Iタイプ。歌詞の載せ方は七五調が中心。歌唱はコブシ(「歌うのか」「城下町」の部分)や節回し(「夕焼け」の部分)を含んでいます。これらをみるとやはり演歌だと思います。

 これに対し非演歌的要素です。まず歌詞のテーマ。典型演歌は、夜の盛り場、男尊女卑的な女性性、といったダーディー・イメージを扱ってきたのですが、本曲では、「美しい日本」「清廉な女性」というクリーンなテーマなのです。そして楽曲は、三段目の崩し方がポップス的であります、特にベースラインをよくお聴きください。また使用楽器に12弦ギターが使われていてロック・ポップ要素を感じます。

 当時国鉄の「ディスカバージャパン」(1970年10月~)のイメージと重なってヒットしました。何と150万枚も売れまして、71年第22回NHK紅白にも出場しました。小柳ルミ子さんはこのデビュー曲で大ヒットしたばかりに、このあと7-8年も同じ路線(旧き美しき日本をたたえる、清楚な女性)で売られることになりました。彼女にとっては芸風を限定されることになって、後々影響があったかもしれません。まあ、この「旧き佳き日本」的歌謡曲が一度当たりますと、レコード会社も商売ですから、量産されてひとつのジャンルに成長することになります。

 ともあれですね、いい曲であることには違いありません。演歌が多様な道を模索し実験を繰り返したころの名作、ぜひもう一度お聴きください。(2025.2.12 院長)

 

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2025年

1月

29日

演歌が自由だった頃「よこはま・たそがれ」

壁の飾りをかえました。

五木ひろし「よこはま・たそがれ」昭和46年(1971)3月 作詞:山口洋子、作曲:平尾昌晃

 前回までの話:演歌というジャンルは1969年藤圭子の頃は、アウトローなテーマを持った。その後大衆に消費されるなかで徐々に様式美となり、演歌という概念の固定化が進んだ。1972年「女のみち」や「涙の操」のようなパロディソングが流行したのは、演歌の概念が集約されてきたことの表れの一つである。

 さて、1969年から72年に至るまでの間に発表されたのが、「よこはま・たそがれ」なのです。楽曲は、必ずしも演歌的とはいえなくて、ポップス路線に聞こえます。よく聴いてください、ベースなんかだいぶとビートが利いています。そして、音階がヨナ抜き五音階(参考:函館の女)ではなく、自然短音階なのです(参考:津軽海峡冬景色)、これがちょこっと洋楽ポップス的になる理由なのです。

 五木ひろしさんの声質が演歌向きなので、(今でいう)演歌らしく聞こえてしまうのですが、本曲での歌唱では、こぶしや熱唱は導入せず、むしろ抑えめでドライな歌い方と言えます。そしてこのドライな印象になるのは、もうひとつ理由があって、歌詞に仕掛けがあるんですね。句の字数が、4-4-7なのです。典型的演歌は5-7調なのでちょっと違う印象を創ります。さらにフレーズ前半を名詞止め(または体言止め)にして、ぶっきらぼうな感じを出すのです。

 この時代の演歌は、まだスタイルが凝り固まっておらず、実験的な要素があった、まだ演歌が自由であった頃、と言えます。五木ひろしとしての4枚目1972年5月「待っている女」や5枚目1972年9月「夜汽車の女」なんて演歌というよりポップスです。

 皆様そのような耳でもってぜひこの五木さんの名作をぜひお聴きください。(2025.1.29 院長)

 

(参考:当ブログ ヨナ抜き音階 函館の女)

(参考:当ブログ 魅惑の三連符 津軽海峡冬景色)

 

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2025年

1月

08日

宙組「宝塚110年の恋のうた/Razzle Dazzleラズル ダズル」

2025年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

早速ですが、壁の飾りをかえました。

宙組「宝塚110年の恋のうた/Razzle Dazzle(ラズル ダズル)」宝塚大劇場2025年1月1日〜2月2日

お正月に観に行きました。色々ありました宙組ですが、今回はトップスター芹香斗亜さんの退団公演です。

宝塚110年の恋のうた、は新春らしい和物ショー。歌人・藤原定家(芹香さん)が内親王(春乃さくらさん)に恋心を持つ者ものの煮え切らず悩んでいるところ、八千代(わざおぎ=古語で俳優の意)の桜木みなとさんが様々な舞台に連れてゆき定家を励ますストーリー。宝塚110年分の宝塚作品の恋のうた名場面を歌い継いでゆくもので、クラシック宝塚ファンには見ごたえある内容なのです。昔の宝塚を知らずとも楽しいショーです。宙組としては和物は2018年白鷺の城以来で、皆様の白塗りお化粧が久しぶりです。始まりのチョンパから大階段の平安貴族たち優雅でした。芹香さん、すっきりした出で立ちで和物が似合いますね。そして桜木さんらしい演技・セリフ回しも良かったです。

 芝居はRazzle Dazzle1950年代ハリウッドが舞台です。芹香さん演じるレイモンドは好青年。長い二番手時代、アクの強い役が多かったので、かえって新鮮でした。芹香さん得意のユーモラスな芝居もあって楽しかったです。

そして瑠風輝さんのシャーリーン(女優役)、これは本作の見どころです。高身長の瑠風さん、ゴージャスなハリウッド女優のオーラが出まくりです。そして歌が上手い!これは宙組最後でいいお役だと思います。芝居達者の若翔りつさん、映画監督のテイラーを渋く演じます。宙組はスター男役がぎっしり詰まっているのですが、鷹翔、風色、亜音のスター達が映画エキストラの役とは何とも贅沢な配置です。

 これから宙組の世代交代が起こるのだと思いますが、それを予感させる若手の方々も楽しみです。

 105期大路君や泉堂君は既に人気、ショー・芝居ともペアーで活躍していました。院長推しの聖君も和物でキリっとした顔立ちがノーブルです、そしてダンス巧者で眼をひきますね。106期の郁いりや君も男役らしさあり、シブくていい芝居するんですよね、そしてロケットで美脚ダンサーです。波輝瑛斗くんは長身を生かしたダイナミックな踊りが魅力。107期の風翔夕くん、表情豊かで観ていると何だか明るい気持ちになれるのです。ぜひ双眼鏡で見つけてハッピーになってください。

 すべてを書ききれないのですが、魅力いっぱいの宙組、これからも楽しみです。皆様、機会がございましたらぜひ宙組の舞台をご覧になってください。

 

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2024年

12月

18日

演歌の進化過程「女のみち」

壁の飾りをかえました。

宮史郎とぴんからトリオ「女のみち」昭和47年、作詞:宮史郎、作曲:並木ひろし

昭和47年(1972)演歌の大ヒット曲です

ジャケット写真、赤スーツ3名がトリオです、向かって左が作詞&ボーカルの宮史郎、中央がギター宮五郎(史郎の兄)、右が作曲の並木ひろし。そう、この歌は曲作りもレコード作り・販売も自主制作だったのです。音曲漫才トリオとして活動、10周年記念に本曲を制作、300枚プレスしキャバレーなどの営業で手売り、そして有線放送をきっかけに人気大爆発。オリコンデータによると325.6万枚売れたそうです。1972年、73年連続で年間売り上げ1位の大記録を立てました。

 それにしても、歌詞、曲、歌唱すべてが演歌的です。詞は当時としても既に時代錯誤な世界。歌唱はダミ声と過剰なまでのこぶし、ビブラートを利かせています。作曲も典型的旋律と楽器構成。そう、この曲は元から演歌の特徴的な形式だけを取り出した、いわばパロディ曲として作られたのだと考えてよいでしょう。

 演歌というジャンルは1969年藤圭子の頃は、アウトロー的なテーマを持ち、体制に抵抗する若者からアンダーグラウンドな支持を得て、最先端の文化のひとつでありました。その後演歌は大衆に消費されるなかで徐々に様式美となってきたわけです。パロディ的な曲が作られることがそのことを示しています。なお「女のみち」スタイルは「ド演歌」などと言われることもあります(1)。

同時代の日本ポップスと並列してみると、67-72年頃はGSの流行があり、また洋楽を取り入れたポップな歌謡曲も多く生まれ、日本のポップスが洋楽的視座からすると大きく進化してゆく時代でした。他方ではこのあたりの時代から「演歌」だけが切り離され独自の発展をしていったと言えましょう。

 さて、ジャケットの写真、前列紺色スーツ2人の紳士は誰なのでしょうか?「トリオ」なのになぜ5人?実はこの2人、単なる店のお客さんだったそうです。「女のみち」をメジャーのコロンビアから出すことになり、急いでジャケット写真を送らねばならず、急遽営業先の店でお客さんと撮った写真だそうです(2)。お客さんはまさか320万枚も顔を晒されるとは思っていなかったでしょうね。

 皆様ぜひ「女のみち」をお聴きになって、「演歌」の進化過程につき思いを馳せてください。

 2024年もブログにおつきあいくださりありがとうございました。皆様よい年末をお過ごしください、そして幸せな新年をお迎えください。2024/12/18(院長)

 

(1)同様のスタイルでヒットしたのが73年殿様キングス「なみだの操」。

(2)チャッピー加藤「昭和レコード超画文報1000枚」2021年、出版社:303BOOKS 

 

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2024年

12月

04日

演歌が最先端だった頃 藤圭子

壁の飾りをかえました。

藤圭子「女のブルース」昭和45年2月5日 作詞:石坂まさを、作曲:猪俣公章

日本ポップスの歴史の流れの中で「演歌」というのは昭和40年頃から作り出された概念あるいはジャンルなのです。大きな流れで言うと戦後歌謡曲が色々な系列を派生したわけです、洋楽ポップス系、ラテン系、青春もの、民謡もの、浪曲ものetc.その中でレコード会社が売り出すための戦略として「演歌」というキーワードを創り出したのです(1)。「演歌」が生み出された経緯について詳しくは大阪大学文学部教授の輪島裕介先生の書物「作られた「日本の心」神話 光文社新書2010年」をぜひ読んでください。

藤圭子さんは、ちょうど「演歌」が出始めたころの大ヒロインです。時代は学生運動が盛んな頃、若者たちから藤は支持を受けました。まず彼女の不幸な来歴が理由の一つです。彼女の両親は旅の浪曲師、旅回りの巡業に連れられ貧しい生活であったと言います。後のマネージャー石坂まさをに見いだされ、昭和44年18歳でRCAビクターから「新宿の女」でデビューしました。そして当時としては例外的な売り出し方も共感を得ました。当時のレコード会社の専属制度から逸脱しマネージャーが作詞作曲し、新宿のレコード店や飲食店で手売りキャンペーンを行っています。これが体制に抵抗する若者たちの姿と重なり共感を得たのです(2)。歌のスタイルはご存知の通り、こぶしと唸りそしてドスの利いた歌声で彼女にしか出せない味です。女の悲哀、やるせなさ、怨念を歌う。これがアウトローの悲哀に繋がったのも共感を得たのです。

1stアルバム「新宿の女」は20週連続1位、2ndアルバム「女のブルース」は17週連続1位。また五木寛之の小説「艶歌」に登場する少女歌手が藤圭子のようであり人気を後押ししたと言われます。さらに同時期、若者のカウンターカルチャーを体現していた「少年マガジン」に藤圭子は2回表紙を飾っています(昭和45年10月18日43号と46年3月14日11号)。画像をみるとポップアートになっているのです。まさに時代のアイコンであったわけです。

皆様機会がありましたら最先端であった藤圭子さんの「演歌」をぜひお聴きください。(2024.12.4院長)

 

(1)ただし演歌という言葉は新語ではなく、元々別のものを指していました。

(2)刑部芳則「昭和歌謡史」中公新書2024年

 

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2024年

11月

20日

月組「ゴールデン・リバティ/PHOENIX RISING」

壁の飾りをかえました。

月組「ゴールデン・リバティ/PHOENIX RISING」宝塚大劇場

トップスター鳳月杏さん、娘トップ天紫珠李さんの大劇場お披露目公演です。

「ゴールデン・リバティ」は西部劇仕立てになっていて、その中に古き良き時代のアメリカ・ミュージカル映画の要素が織り込まれて、楽しく見れる作品でした。

鳳月さんは入団19年でトップ就任。芝居巧者、歌唱上手、男役の色香、そして超絶に脚長スタイルとなんでも揃った貫禄です。天紫さん、大柄で華やかで鳳月さんとの並びが様になっています。

院長の好きな風間柚乃さんが2番手になられました。風間さん、本当に何でもできる方です、いい芝居をされるのです。

さすが「芝居の月組」で皆さん演技の作り込みが深い。西部劇では緊迫感やスピードが随所にあり、そしてサーカス場面はコミカルで古き良き時代のアメリカ・ミュージカル映画の要素が感じられるのです、特にベテラン佳城葵さん、サーカス団長の役がアメリカ映画そのもの!巧い!礼華さん・彩海さんのならず者役、絶妙な小物感を演じておられるのが味わい深いです。

あと公演プログラムには役柄につき細かく紹介されています、大野先生の月組メンバーに対する愛が伝わってきて、ここを読むのも楽しいです。

ショーは「PHOENIX RISING」、豪華豪華なショーです。金ピカで人数も多くにぎやか。フェニックス鳳凰が色んな国を廻ってゆき、その各国にちなんだナンバーと踊りが取り上げられます。目まぐるしくてついていけないほど。中詰めでは客席降りもあります。あと何回かチャンスがあるのでしっかり観てゆきたいと思います。

今回退団の春海ゆうさんと朝陽つばささんの場面があります。同期どうし春海さんと夢奈さん、朝陽さんと英さんが銀橋渡り、感動ものです。

素晴らしい新生月組の舞台、機会がありましたらぜひご覧ください。

(2024.11.20 院長)

 

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2024年

10月

30日

鈴木淳の演歌 八代亜紀「なみだ恋」

壁の飾りをかえました。

八代亜紀「なみだ恋」昭和48(1973)2月作曲:鈴木淳、作詞:悠木圭子 

八代亜紀さんは昭和46年9月「愛は死んでも」でデビュー、1~3枚目はそれほど売れず。4枚目「なみだ恋」が120万枚の大ヒット、昭和48年末には第15回日本レコード大賞で歌唱賞を受賞、第24回NHK紅白に初出場しました。

曲は典型的演歌調メロディー。鈴木淳先生はジャズ・ポップスをベースに日本的哀調メロディーを取りこむのが特徴。この曲はポップス色をおさえた作りだと思います。当時流行し始めていた「演歌」スタイルを完全踏襲したことで幅広く人気が出たのでしょう。

改めて譜面を見ますと、短調ではなく長調でした、キーはF(へ長調)、複雑なコード進行はなく、I,IV,Vで構成され安定進行。そして構成音は典型的ヨナ抜きで、F-G-A-C-Dのみです、B♭とEはありません。リズムは4分の3拍子。譜割り(リズム割)はAメロ、A’メロ、Bメロ、サビ、Cメロともにほぼ同じ、終わり部分は必ず3拍長音、リズム面も安定感重視です。

楽器構成では、泣きのサックスに情念を感じ、クリーンなギターに哀愁を感じ、優しいストリングスが諦観を表しています。

安定感とわかりやすさが本作ヒットの理由のひとつだと思います。

ボーカルは八代さんとしては抑制をきかせ、さらっと歌っている気がします。それがますます歌詞世界の哀感を表現しているように感じます。

「演歌」スタイルは昔からあったわけではなく、昭和40年頃から急激に広がった新興のサウンドだったのです。その頃の歌謡曲のメジャーなジャンルとして、ポップス、青春モノ、ラテン、GS、あと黎明期のフォークなど、概ね洋楽志向の音楽がありました。それらに対して、あえて旧来の浪曲・浪花節・民謡などのテイストを取りこんだ「演歌」調を新しい音楽としてレコード会社が生み出したわけです。

本作品は昭和48年ですから「演歌」が発祥しすでに安定期の作品です。このあと、演歌は同様な作品が量産され一大ジャンルに成長します。そして歌謡曲から分離してゆきます。

鈴木淳先生の演歌、かつ八代亜紀さん初期のヒット作、皆様機会がありましたらぜひお聴きください。(204.10.30院長)

 

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2024年

10月

16日

鈴木淳メロディー「愛のきずな」

壁の飾りをかえました。

安倍律子「愛のきずな」昭和45年8月作曲:鈴木淳、作詞:加茂亮二

 ちあきさん「四つのお願い」に続きこの曲も鈴木淳先生作曲。昔の歌謡曲が大人むけのものであった典型的な作品です。安倍律子21歳にしてこの歌唱、ものすごい貫禄です。唸るようなハスキーボイスにビブラート、そして1コーラス終わり部分には音符無視ともいえるほど長く引っ張る。これはかなり印象付けられます。この曲でデビューし(キングレコード)、セクシーアイドル的な売り出し方もあり人気が出て、いきなり同年末の日本レコード大賞新人賞を獲得しました。

 同じ頃、鈴木淳先生は、ちあきなおみ初期作品も担当していました(1枚目「雨に濡れた慕情」44年6月~8枚目私という女46年6月)。ちあきさんも同じくセクシー系で売り出していたのです(コロムビア)。あとは小川知子さんにも43年2月~45年4月にかけて楽曲提供されています(東芝)。小川さんはカワイイ系で売っていました。鈴木淳先生は、この時代のアイドル・ポップ育成に多大な貢献をされています。そしてレコード会社に注目ください、すでに作家専属制度はなくなり、フリーランス作曲家の時代になっているのです。

 さて先生の作風はというと、ジャズやポップスが背景にありつつ、感傷的な和風メロディを混ぜるという感じです。つまりちょうどこの時期に流行り始めた「演歌」調を取り入れるのが特徴だと思います。本作品はイントロからAメロが演歌調、しかしBメロに入るとベースとドラムが暴れビート・ポップになる、非常にカッコいいフレーズがあるのです、そしてまたCメロ演歌に戻るという構成です。コードもツー・ファイブ(II→V→I)進行が盛り込まれてたりしてポップス性があるのです。この融合ぶりを味わうのも歌謡曲鑑賞の楽しみです。 

 皆様、ぜひ一度この鈴木淳作品をお聴きくださいませ。(2024.10.16院長)

 

 さてわざわざ鈴木淳とフルネームで書いているのは、この時代の歌謡曲界には、鈴木姓の作曲家が何人もいらっしゃるからなのです。鈴木邦彦(GS・ポップス系:ゴールデンカップス、ジャガーズ、シャープホークス、ダイナマイツ、黛ジュン、西城秀樹、森田健作など)、鈴木道明(ジャズ・ラテン系:西田佐知子 赤坂の夜は更けて、女の意地、日野てる子ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョーなど)、鈴木庸一(ビッグバンドジャズ、ラテン系:渡辺マリ 東京ドドンパ娘、青江三奈 伊勢佐木町ブルースなど)

 

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2024年

10月

02日

花組「エンジェリックライ/Jubileeジュビリー」

壁の飾りをかえました。

花組「エンジェリックライ/Jubileeジュビリー」宝塚大劇場2024年9月28日〜11月10日

花組、新トップコンビ、永久輝せあさん、星空美咲さんの大劇場お披露目公演です。

お芝居「エンジェリックライ」、ストーリーはファンタジーものです。天使アザゼル(永久輝)とエレナ(星空)の冒険と恋の物語であり、娘エレナと父フェデリコ(凪七)との親子物語でもあります。2つのストーリーが交錯して物語が進みます。設定で「嘘をつけない天使」というのがあるのですが、ここの表現が面白おかしくて楽しめます。凪七さんの重厚で奥深い芝居も見どころです。綺城さんは大天使ラファエル、大マジメで頑固な性格の役です。天使界で同期のアザゼルとは犬猿の仲ですが、でも深い友情がある。綺城さんの実直さが伝わってくる芝居です。綺城さんは今回で退団、歌がすばらしくて実力派のジェンヌさん。花→星→花組とたくさん活躍されてきました。

 聖乃あすかさんが悪魔フラウロス役で、見事にサイコパスな表情をされるのです。これは見所です。

 ショーは「ジュビリーJubilee」良かったです。何といいますか、じつに格調高いんですよ。まずクラッシックの楽曲が多く使われているのが優雅、特に「月光」の場面は耽美的でした。永久輝さんのいつもの眉間にしわ表情が渋さを醸し出します。特筆すべきは凪七さんのシーン、ほんとに優雅で格調が高まるのです。これこそ凪七さんの持つオーラ、今回で退団されるのがもったいない、宝塚の大きな遺産です。

 そして黒燕尾!観ているほうも背筋がピシッとなります、これこそ正統派宝塚。絢爛豪華さ十分、中詰めの客席降りは盛り上がります。永久輝さん、後列まで降りて大サービスです。

 私の大好きな男役、泉まいらさん、今回退団で惜しい限りです。ホットな踊り、そして美声の歌手、渋い演技、しっかり見納めていきたいです。ぜひご覧ください。芝居ではエンピレオ場面でタキシード姿・カメラを持った記者役です。レビューでは中詰めでソロを歌い上げます。黒燕尾にて同期(100期)聖乃あすかさんにリフトされる場面は涙を誘いますね。

 私が最近注目している、愛乃一真さんも、絶対にオペラグラスを向けていただきたいです。とにかくダンスがキレキレなんです。ポーズの姿勢、手足の角度までカッコイイん。芝居では、天使のダンスでセンター、酒場のお兄ちゃんなど。レビューでは数々場面あり、下手でピックアップで登場、リフトあり、ぜひ見てください。なお本公演で初めて劇場内パネル写真入りされました。

 若手、美空まるさん105期(芝居で天使ウタエル、眼鏡と帽子の子)がかわいらしい。今回新人公演の主役ですから楽しみです。

 そして胡華詩ちゃん105期、初のエトワール、もともと歌上手で通っていました、見事な独唱に感動です!

 あと、院長は光稀れん君(108期)に注目しています。男役らしい貫禄があって、ダンスが上手なのですよ。芝居では警官の制服が合っています、前作ではナチス軍服でした。レビューでは若手ダンサーのピックアップ場面で目を引きました。これからが楽しみです。

 見どころたくさんの新生花組、ぜひともご覧ください。(2024.10.2 院長)

 

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2024年

9月

11日

アイドル時代のちあきなおみ2「四つのお願い」

壁の飾りをかえました。

ちあきなおみ「四つのお願い」昭和45年、作詞:白鳥朝詠、作曲:鈴木淳(1)、編曲:小谷充

 院長が大好きなちあきなおみさん。4枚目のシングルです。この曲が初めてオリコン10位以内、最高4位、37.6万枚のヒット曲となりました。昭和45年(1970)『第21回NHK紅白歌合戦』にも初出場しています。

 当時ちあきさんは「お色気アイドル路線」で売り出されていました。初期アイドル時代はミニスカート姿の写真や動画が残っています(2)。「喝采」以降は大人向けでドレスや着物の衣装が多くなりました。

 ちあきなおみさんの魅力は何といっても超絶にうまい歌の表現力です。本曲のサビ部分、ひとつ、ふたつ~と四つのお願いを歌い上げるところ、よくお聴きください。歌の表情がすべて違うんですよね、本当にすばらしい。

 演奏もいいんですよ。サビのところは歌唱とストリングスがきれいに交錯して最高潮の盛り上がりを創り出すのです。またドラムがグイグイリズムを引っ張るのも味わってください。

 なお、B面も良い曲なんです!ピアノの和音がとてもカッコよくて、クールジャズの趣があるのです。そしてビートあふれるこのベース、きっと江藤勲さんが弾いているのだろうと思っています(3)。こちらもぜひお聴きください。

 皆様、機会がありましたら、ちあきなおみさんの歌唱をぜひ鑑賞なさってください。(2024.9.11 院長)

 

(1)作曲の鈴木淳先生は、初期ちあきなおみ作品『雨に濡れた慕情』、『朝がくるまえに』、『四つのお願い』、『X+Y=LOVE』、『別れたあとで』を書いておられます。ほかには伊東ゆかり『小指の想い出』、安倍里葎子『愛のきずな』、小川知子『さよならがこわいの』、八代亜紀『なみだ恋』など60-70年代の名曲を作られています。

(2)ただし昭和45年紅白歌合戦に出場した時は和服、NHKだからでしょうか。この時は客席降りサービスまで付いていました。

(3)江藤さんのベースは、ピック弾きのパチパチ音が入ること、独特のビートとタメを感じることなんです。初期のちあき×鈴木作品のなかでも森岡賢一郎さん編曲で江藤さんの音色が聞けます。ベースだけ聴きながら酒が飲めるサウンドなんです。

 

ちあきなおみ作品

「雨に濡れた慕情」「X+Y=LOVE」「夜間飛行」

 

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2024年

8月

28日

星組「記憶にございません!/Tiara Azul-Destino-」

壁の飾りをかえました。

星組「記憶にございません!/Tiara Azul-Destino-」宝塚大劇場2024/8/17~9/22

 三谷幸喜さん脚本・監督映画の宝塚舞台版、政界コメディです。史上最悪のダメ総理、黒田首相が記憶喪失になり、良い総理に変わってゆく、という話です。最終的には宝塚らしく、いい話かつ愛にあふれるハッピーエンドとなるのです。礼さん、喜劇を熱演そしていつもの様に熱唱します。そして本公演は娘トップの舞空瞳さん退団公演。かわいくて踊りが上手で、礼さんの相手役をしっかり務められた。退団さびしいですな。

喜劇ですから、笑いやドタバタ場面が多いのです。とくに、首相が記憶を失いトンチンカンな言動をするのに対し、井坂首相秘書官(暁千星さん)が大真面目なところが面白いのです。暁さん、何が起こっても一切笑わない!よく耐えるなあと思います。ここ笑うポイントだと思います。なお、礼真琴さん恒例のムチで叩かれ場面もあります。

凄腕の専科 輝月ゆうまさんが、鶴丸官房長官を演じます。これが本当に巧いのです。輝月さん最近の演目で引っ張りだこです。首相の旧友をひろ香祐さんが演じます。礼さん、輝月さん、ひろ香さんと95期の同期で息が合ってるなあと感じました。

 若手の活躍も注目です。総理の息子篤彦役の稀惺かずと君と番場事務秘書官役の詩ちづるちゃんも堂々としたもの。ミス・サクランボの鳳花るりなちゃんかわいいです。SPチームの彩紋ねお君、クールなキャラクターを演じます。長身の青風希央君カッコイイですね。皆さんこれからの活躍が楽しみです。

 後半のショーはTiara Azul-Destino- スペイン語で「運命の青いティアラ」を意味します。パッション!な星組にピッタリです。熱狂のカルナバルがテーマになっていて、ラテンナンバーを中心に、熱く、ずっと踊り続けている、という印象です。どの衣装も華やかです。礼真琴さんにぴったり。客席降りもあってそれは豪華です。

 皆様機会がありましたらぜひ星組の素晴らしい舞台をご覧ください。(2024.8.28院長)

 

カテゴリ 宝塚歌劇 

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2024年

8月

14日

「聖断 天皇と鈴木貫太郎」「日本のいちばん長い日」

8月は昭和を考える月です。

「聖断 天皇と鈴木貫太郎」半藤一利 著

太平洋戦争で誰が英雄であったかというと、ポツダム宣言受諾まで導いた鈴木貫太郎首相をおいて他ないと思うのです。日本を救ったヒーローです。

海軍軍人、日清日露戦争において水雷艇で活躍、その戦術と勇猛果敢にて鬼貫太郎と称された。連合艦隊司令長官などを歴任。昭和4年~11年、昭和天皇の侍従長を務め、天皇の信頼が厚い。二・二六事件では青年将校から4発も撃たれ瀕死の重傷を負うが生還。その後枢密院議長を務める。

戦局悪化の昭和20年4月小磯内閣が総辞職ののち、天皇から懇願されて内閣総理大臣を拝命、この時既に満77歳の高齢であった。終戦工作に陸軍の徹底抗戦派を抑えて、ポツダム宣言を受諾し、太平洋戦争を終戦へと導いた。 

何事も始めるより終えるほうが難しい。戦争も然りで終戦させることの難しさが伝わってきます。教科書などでは本土空襲→沖縄戦→ポツダム宣言→原子爆弾→ソ連参戦→終戦、と1ページにあっさりまとめられていますが、そんな簡単ではないわけです。

誰が見ても戦争継続が困難な中、表立って終戦を口に出すと、徹底抗戦派からクーデターを起こされ終戦工作がご破算になる危険があります。反対派から命を狙われるかもしれない。そんな中で鈴木首相は奮闘するのです。

なお「日本のいちばん長い日」半藤一利 著は8月14日と15日にスポットを当てた有名作。実際にクーデターの企てがあって、これを間一髪回避して15日正午の玉音放送が実行された、緊迫の24時間が描かれています。なお、終戦の詔書はいちど全文を読まれることをお勧めします。特に後半は良いことが書かれています。

日本が敗戦に至るまでの検証の中で色々な教訓をみることができます。皆様、ぜひお手に取って読んでください。

厳しい暑さが続きます。皆様くれぐれもお身体にお気を付けください。(2024.8.14院長)

 

カテゴリ 読書

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2024年

7月

31日

チョットマッテクダサイ

壁の飾りをかえました。それにしても暑い!そんな猛暑にはこの曲をお聴きください。

ゴールデンハーフ「チョットマッテクダサイ」昭和46年、作詞作曲:Loyal Garner & Jeanne Nakashima、訳詞:香取治、編曲:川口真

 ハーフ・アイドル・グループのゴールデンハーフ最大のヒット曲、オリコン17位まで上がりました。写真左からマリア、エバ、ルナ、ユミ(1)。

 曲はソフト・ボッサで、スキャット・コーラスの響きがおしゃれ。そしてピアノも金管もカッコいいんです。このあたり、編曲家川口真さんの腕が冴えわたります。(2)

 原曲はハワイのサム・カプーさんによるもので、ハワイアン風ボサノバ。ゴールデンハーフ版のレコードジャケットがハワイアン。なので完全に夏の歌だと思いこんでいました。しかし発売は1971年12月1日完全に真冬です。そして歌詞をよく見ると、桜の季節が舞台で、別れの歌だったのですね。英語と日本語ミックスの歌詞で、片言の日本語「チョトマテクダサイ」が心に沁みるのですよ。"Never leave me Kudasai."って、でたらめな英語日本語ミックス(これは原曲の歌詞通り)ですがこれも聴いているとしみじみですね。

 しかし、なぜだかやっぱり夏の歌だと思ってしまいます。

皆様、ゴールデンハーフ「チョトマテクダサイ」ぜひお聴きになって暑さを吹き飛ばしてください。 (2024.7.31院長)

 

まきの内科クリニックは8月10日(土)~16日(金)お休みをいただきます。8月17日(土)より通常診療いたします。よろしくお願いいたします。

 

 (1)ゴールデンハーフについては当院ブログ2020/08/19「ゴールデン・ハーフの太陽の彼方」もご参考になさってください。。人気TV番組「8時ダヨ!全員集合」アシスタントで大人気でした。マリア(Gメン75の速水涼子刑事で出演、時代劇でも活躍)、エバ(元祖バラドル、天然ボケのコントやギャグが楽しかった)、ユミ(小林ユミさん、実は完全日本人だったことをのちにカミングアウト)、ルナ(解散後セクシー女優を経て引退)

(2)川口真さんの作品、作曲:ちあきなおみ「円舞曲(わるつ)」しばたはつみ「サイレント・トーク」内藤やす子「弟よ」トワ・エ・モワ「ともだちならば」、

編曲:ザ・ベンチャーズ「二人の銀座」安西マリア「涙の太陽」欧陽菲菲「雨の御堂筋」ザ・テンプターズ「エメラルドの伝説」ザ・ドリフターズ「ドリフのズンドコ節」渚ゆう子「京都の恋」森山加代子「白い蝶のサンバ」など

 

カテゴリ 音楽

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2024年

7月

17日

雪組 ベルサイユのばら フェルゼン編

壁の飾りをかえました。やっと観れました。

 

雪組『ベルサイユのばら』フェルゼン編 宝塚大劇場2024年7月6日〜8月11日

 雪組トップスター彩風咲奈さんの退団公演です。彩風さん、スタイルが良くて、ダンスが上手くて長い手足が映えるスターさんです。院長は彩風さんの芝居が好きでして、咲ちゃん節を聴けるのもこれが最後かと思うと感慨深いです。咲ちゃんは、何と言いますか、一途に強い意志を持ち続ける男を演じるのが巧い(1)!かと思うと男が苦悩する複雑な気持ちを表現する渋い芝居もしてくれるのですよ(2)。咲ちゃん今回も役に入れ込み、鼻水流すほど泣いておられました。

 娘役トップ夢白あやさんはマリーアントワネット役。もうね、本当に美しいんですよ。美しさは正義と思います。また演技にも相当力が入っていることがわかります。ここぞという場面ではベルばら的大袈裟なセリフ回しもピタリと合わせていい味わい。そして涙ボロボロ流して迫真の芝居!フィナーレのエトワール独唱もすばらしい。

 朝美絢さんのオスカル美しすぎる。縣千さんのアンドレも

 さて「ベルばら」は宝塚初演から今年で50周年だそうです。何度も再演され、映像も出回っているので、もはや話の筋は皆が知っている有名作品。どんな場面が次に来るかファンの皆様は周知のとおり。いわば歌舞伎とかオペラみたいな古典芸能に近いような気がします。

 ベルばらならではの豪華絢爛な構成も大きな魅力。プロローグの小公子の「ご覧なさい」。そして舞踏会、華麗な衣装の貴婦人たちが詰め詰めに踊る、本当に壮観です。そして軍服群舞。これこそ宝塚・ベルばら。

 さて、下級生たちの活躍も見どころです。プロローグと中盤で小公子役センターの紀城ゆりやクン、堂々たる歌と語り部役を披露してくれます。貫禄が出てきたなと感じます。娘役さん音彩唯ちゃんもジャンヌの役で大立ち回り。普段は清楚な娘役が多いが、今回は悪い女を巧く演じています、歌も聴かせてくれます。そしてスター路線の華世京クン、ベルナール役上手いです!以前に比べ声の通りも良くなった、表情芝居も充実、これからもっともっと楽しみです。

 さてフィナーレでは彩風さんへのトリビュート・ナンバーが繰り出され、もはやサヨナラショーの様相です。特に"C'est la vie, adieu"は涙を誘ってしまいますね。

皆様機会がございましたらぜひ宝塚の伝統芸能、雪組の「ベルばら」をご覧になってください。(2024.7.20院長)

 

(1)『蒼穹の昴』 梁文秀、『ライラックの夢路』ハインドリッヒ、『ひかりふる路』ダントン、なんか良かったなあ。

(2)『壬生義士伝』大野次郎右衛門、『ワンス アポン』マックス(=ベイリー長官)、これもいぶし銀の芝居。

 

カテゴリ 宝塚

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2024年

7月

03日

梅雨ですね ワン・レイニーナイト・イン・トーキョー

梅雨ですね、壁の飾りをかえました。

日野てる子 「ワン・レイニーナイト・イン・トーキョー」昭和40年 作詞・作曲:鈴木道明

 本作は昭和38~40に複数名の歌手で発表されました(1)。作詞作曲は、鈴木道明(すずき どうめい)さんと云ってラジオ東京(現在のTBS)の社員だったそうです。西田佐知子さんの「赤坂の夜は更けて」や「女の意地」も書いておられます。

日野てる子さんは元々ハワイアン歌手でしたが、「夏の日の思い出」が大ヒットし歌謡曲も歌うようになりました。

なお、当初はA面が「ワンレイニー~」でしたがB面「夏の日」の方が大ヒットし、後にAB面を入れ替え再発売されました(写真のレコード)。

 前回の、沢たまき「東京プレイマップ」と同じく、ジャズボッサ風の曲が大人風、フルート、ジャズドラム、シロフォンが本当にカッコイイです。この時期ボサノバが日本の歌謡界に浸透してきたことがわかります。

 もともとボサノバはブラジル発祥で、ジョアン・ジルベルト「シェガ・ジ・サウダージ」(2)1958年あたりが嚆矢です。アントニオ・カルロス・ジョビン「イパネマの娘」62年作曲、ジョアンとアストラッドが結婚し63年に米国移住(なお64年にブラジルは軍事政権となった)ちょうどその頃、モダンジャズ~クールジャズの流れをくむウェストコートジャズを実践していたスタン・ゲッツ(Sax)が60年代初頭からボサノバを取り入れ、64年にジョアンと組んでアルバム「ゲッツ/ジルベルト」を発表、これが米国で大好評を得ました。

おそらくこの流れの中で、つまり米国のジャズ経由でボサノバが日本の作編曲家たちに入ってきたんじゃないかと推察しています。

 そして以前にも申し上げたように(3)、ポリドール(日本グラモフォン)の録音技術もすばらしい!ジャズクラブで演奏を聴いているかのような臨場感、そしてボーカル目の前で歌っているように感じます。

 皆様、雨の日は、ぜひジャズボッサが歌謡曲に取り入れられてきた時代を思いながら、「ワンレイニーナイトイントーキョー」をお聴きください。(2024.7.3院長)

 

 

(1)越路吹雪、和田弘とマヒナスターズ、さらにはブレンダ・リー、青江三奈、のちに西田佐知子、八代亜紀さんも歌っています。

(2)当院ブログ2019/07/17 ボサノバを創った男 ジョアン・ジルベルト 

(3)2021/10/13 アイドル時代前のかわいい路線「逢いたくて逢いたくて」

 2021/10/27大人の歌謡曲「赤坂の夜は更けて」

(4)なお、この曲は別に有名な話題があります。「ワンレイニーナイトイントーキョー」事件と言って、盗作疑いで裁判になったことがあります。判決はシロでした。調べてみてください。

 

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2024年

6月

12日

大人の魅力 沢たまき「東京プレイ・マップ」

壁の飾りをかえました。2回連続でオネエです。

沢たまき「東京プレイ・マップ」昭和45年 詞:伊藤アキラ,曲:小谷充

 前回ご紹介しましたテレビドラマ「プレイガール」(1)のエンディングに使われた曲です(2)。沢たまきさんのボーカル低音ハスキーで大人の魅力です。

それでもって歌詞もカッコいい!半分は「東京プレイマップ」と街の名前を連呼する、考えようによってはちょっと手抜きな歌詞です。意味のある言葉は少ないですが、短い言葉で大人の男と女のクールな関係が浮かぶ、そんな詞なのですよ。「触れ合うはグラス」なんて最高です。昔の作詞家は巧いですね。

 そして曲がジャズ+ボサノバでめちゃくちゃカッコイイんですよ。フルートとビブラフォン(鉄琴)がクール!硬質なベースサウンドは江藤勲さんじゃないだろうか。

 なお、2枚目の写真は「プレイガール」の劇伴曲集CDです。こちらは山下毅雄(ヤマタケ)さん(3)作曲でめちゃくちゃカッコイイ。

 皆様、機会がありましたらぜひ「プレイガール」サウンドをお聴きになってください。(2024.6.12 院長)

 

(1)昭和44年(1969)4月7日~昭和51年(1976)3月29日放送。

(2)東京プレイマップは64話(1970年6月22日)~ 82話(10月26日)。その他大部分の回はあのスキャット曲です。

(3)初代ルパン三世のBGMも作っておられます。ヤマタケさんの世界、一度聴いてみてください。

 

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2024年

5月

29日

5/31は世界禁煙デー「ベッドで煙草を吸わないで」

壁の飾りをかえました。

沢たまき「ベッドで煙草を吸わないで」昭和41年詞:岩谷時子、曲:いずみたく

 5/31は世界禁煙デー、日本では5/31-6/6禁煙週間です。現在喫煙をされている方、試しにタバコをやめてみましょう。思いのほか身軽になりますよ(院長経験談)。

 さてこの作品は「オネエ」こと沢たまきさんの大ヒット曲です!沢さんは昭和12年生まれ、短大在籍時代にラジオのど自慢入賞をきっかけに昭和31年テイチクからデビュー、ラテンや洋楽カバーっぽい曲を出しましたがあまりヒットせず。ジャズを志向して昭和41年ビクターに移籍した第1弾が本作品です。これA面が「教えて頂だい」で、B面の「ベッドで煙草を吸わないで」(1)の方が大ヒットしたわけです。

 作詞作曲は岩谷時子&いずみたく、これまた情緒あふれる作品を送り出すコンビです(2)。大人な内容の歌です。演奏も大人向けのしっとりしたラテンとジャズサウンド。沢たまきの低音ハスキーボイスがぴったり。以前もお話ししましたがまだこのくらいの時代まで歌謡曲は圧倒的に「大人のもの」だったのです。沢さんは本作でイメージがついたのか、このあと大人路線の歌が多くなります。

 さてなぜ「オネエ」なのかというと、有名なテレビドラマ「プレイガール」(3)で「女性国際秘密保険調査員」チームのリーダー役を演じ、部下の女子たちに「オネエ」と呼ばれていたからなのですよ。昭和時代では許されたお色気アクションドラマです。チームの女の子たちみんなすべてが60年代テイスト、おしゃれでかわいいい、そしてとりわけ沢さんが大人の魅力めちゃくちゃカッコイイ。

 皆様、機会がありましたらぜひオネエの歌を探してお聴きになってください。(2024.5.29 院長)

 

(1)同じ意味の題名”Don't Smoke In Bed”という英語の歌がありますが別の曲です。1948年作詞・作曲: Willard Robison、 歌手Peggy Lee

(2)同時代の岩谷&いずみコンビ作品:ザ・ピーナッツ「恋のバカンス(1963年)」「ウナ・セラ・ディ東京(1964)」ピンキーとキラーズ「恋の季節(1968)」 佐良直美「いいじゃないの幸せならば(1969)」など

(3)プレイガール(昭和44-49年)、続編のプレイガールQ(49-51年)人気ドラマで長いこと続きました。まだDVDが発売されています。

 

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2024年

5月

15日

ネオGS ファントムギフト「魔法のタンバリン」

壁の飾りをかえました。一連のGSシリーズはこの回でいったん締めたいと思います。

ザ・ファントムギフト「魔法のタンバリン」昭和62年(1987)作詞:ピンキー青木、作曲:ナポレオン山岸&サリー久保田

発表年に注目ください1987年です。GSは70年頃に衰退したのですが、その後日本音楽シーンはいろいろ変遷を経て、83-85年頃からニューウェイブやバンドブームなど多様な音楽スタイルが発展しました。その一つの個性的ムーヴメントが「ネオGS」なのです。20年も経ってGSが再評価されたわけです。

 80年代の日本は、アイドル全盛の歌謡曲と並行し作編曲が凝った大人向けシティポップやハードロックがメジャーな流れで、最先端の音楽はテクノやニューウェイヴでした。85年頃からバンドブームがあり、そこではパンクやビート系がメインだったと思います。そんな中、60年代のシンプルなサウンドを顧みようという動きのひとつが「ネオGS」なのです(1)。実際はGSを再現するというより、1960年代のロック・サウンドを表現する洋楽寄りのグループが多かったように思います。

 ネオGSで本格的に日本のGSサウンドと60年代の雰囲気を盛り込んだのは彼ら「ファントムギフト」でした。メンバーは(敬称略)ピンキー青木(Vo)、サリー久保田(B)、ナポレオン山岸(G)、チャーリー森田(D)と名前も当時のGS風、シンプルな4ピースのロックコンボ構成です。

 本曲はインディーズのソリッドレコードからの3作目シングルです。もう歌詞がGSの世界なんですよ。ピンキー青木(1)の詞は神秘的な世界観、それがGSのロマンチシズムとちょうど符合したのです。ナポレオン山岸の超絶サイケギター、サリー久保田のリード・ベース(60-70年代の江藤勲寺川正興ルイズルイス加部ベース風)、チャーリー森田のタイトなドラムビート、どれもスゴくかっこいいんですよ。GSとして聴いて再現度が高いですし、ガレージロックとしても本当に名作だと思います。

 彼らは同年MIDIレコードから小西康陽プロデュースでLP「ファントムギフトの世界」を発表、これもかっこいい作品でした。その後メンバー間の音楽志向などの違いから89年に活動停止しました。

 ネオGSは他のグループの活動もふくめ盛り上がりました。この「60年代サウンドを見直そう」という考えは、その後の「渋谷系」に引き継がれて90年代音楽に足跡を発展したのです。

 皆様、機会がございましたら、ぜひとも「ファントムギフト」を探してお聴きください、そして80年代当時のネオGSの熱気を浴びてください。(2024.5.15 院長)

 

(1)ピンキー青木さん、2024年3月頃に亡くなっていたと発表されました。享年62歳。ご冥福をお祈り申し上げます。

(2)代表的グループ、コレクターズ、ストライクス、ワウワウヒッピーズ、デキシード・ザ・エモンズ、ヒッピー・ヒッピー・シェイクス、レッド・カーテン -(後のオリジナル・ラブ)など

 

カテゴリ 音楽

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2024年

5月

01日

GSからロックへの架け橋、モップス「朝まで待てない」

壁の飾りをかえました。あまりご存知ないかもしれぬGSばかりですみませんです。

ザ・モップス「朝まで待てない」昭和42年(1967)11月、作詞:阿久悠、作曲:村井邦彦

日本のポピュラー音楽史においてGSからロックの流れでザ・モップスは重要なんですよ。GSブームは王子様メルヘン系で売り出すグループが多かったなか、モップスはロック寄りでした。ジャケット写真のメンバー服装もロックですね。まあレコード会社や事務所の意向もあったようです。

さて本作は彼らのデビューシングルです。そして阿久悠さんの本格的作詞デビュー曲でもあるということで歌謡曲の歴史上重要です(1)。さらにモップスと言えば、鈴木ヒロミツのボーカルです。ちなみに皆さんが思い浮かべる鈴木ヒロミツさんは歌手ではなく俳優あるいはコメディアンの姿でしょう。僕も小さい頃はすっかりそう思っていました。そんなことはとにかく鈴木さんのボーカルがものすごい迫力、ロック歌手なんですよ(1)。ぜひお聴きください。彼は英国のアニマルズ(The Animals)のボーカル、エリック・バードン(2)にずいぶん思い入れがあったようで歌唱の雰囲気が似ています。

星勝さんのリードギターも当時流行のサイケデリック・サウンドを体現していて味わい深い。当時のアイドル系GSとは一線を画す特徴あるギターサウンドです。星さんはモップス解散後、音楽プロデュース・編曲家の道に進まれ、ヒット曲を数々手がけました(4)。ぜひwikiを御参照ください。前回も書きましたが、GSって後に大きな業績を残した人がたくさんいるのですよ。

モップスは69年に音楽性の違いから東芝に移籍します。GSブームが69-70年頃に下火になり数々のGSが解散する中、70年以降彼らはニューロックな作風にかわり、74年に解散するまで日本ロック黎明期の名作を残してゆきます。

皆様日本のロックの萌芽のひとつであるザ・モップスのサウンド、機会があればぜひお聴きください。なお、「朝まで待てない」は67年のオリジナル版のほか73年に自身が再録音したバージョンもあり、聴き比べしてください、73年版は当時のサウンドとは思えないくらいの迫力です。

(2024.5.1院長)

まきの内科クリニックは5月1日(水)~5月6日(月祝)お休みをいただきます。5月7日(火)より通常診療いたします。よろしくお願いいたします。

 

(1)阿久悠「昭和歌謡曲と日本人」河出書房新社 (2017)第五章

"ヒロミツさんとは縁があった。つまり、ぼくの、作詞家としての事実上のデビュー作ーB面になった物は除くーである「朝まで待てない」を歌ったザ・モップスのリードボーカルが、彼であったからである"

"その昔を知らない人のためにぼくは断言する。鈴木ヒロミツはロック歌手だったのだ。"

(2)まきの内科クリニックブログ アニマルズ「悲しき願い」

(3)星勝さんの解説、ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%9F%E5%8B%9D

 

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2024年

4月

16日

GSの功績 アウトキャスト

壁の飾りをかえました。まだまだGSは続きます。

アウト・キャスト「一日だけの恋」昭和42年(1967)年9月

 GSが流行したのは67~69年で、その初期からいたグループです。実力はあるものの、人気ではタイガースやスパイダース、テンプターズなどに後れを取ってそれほど売れなかったようです。

この曲は初期メンバー(1)のときのものです。67年ですからまだ歌謡曲化していないGSらしい作品です。特にエレキ(水谷淳さん以下敬称略)、ハモンドオルガン(穂口雄右)なんかすごくいいんですよ。

 今回GSの功績というタイトルをつけました。これね、GSというのは短期間のムーヴメントではありましたが、音楽面、文化面、音楽業界に多大な影響を与えました。そして、後世に影響与える人材を多数輩出した功績も極めて大きいのです。その意味ではこのアウトキャストというグループは人材の宝庫です。

ギターの水谷淳、後に水谷公生と名乗り、日本の代表的ギタリスト(2)として名を残し、また作曲編曲でも大活躍。

轟健二(後の松崎澄夫)はキャンディーズをプロデュース、その後音楽プロデューサー、芸能事務所アミューズの社長を務め数々のグループ・アイドルを輩出した。

穂口雄右(キーボード)はアウトキャスト脱退後、他グループやスタジオミュージシャンなど経てキャンディーズの作曲編曲に携わり、以後作編曲家として活躍。

 ぜひアウトキャストのOBの皆さんの活躍を調べてください。のちの日本音楽に大きな影響をあたえていることがわかります。皆様、機会がありましたらアウトキャストをお聴きください、そしてGSの功績について思いを馳せてください。(2024.4.17院長)

 

(1)初轟健二(ボーカル、フルート)、藤田浩一(ギター)、穂口雄右(キーボード)、水谷淳(リードギター)、中沢啓光(ドラムス)、大野良二(ベースギター)

(2)キャンディーズ「春一番」のあのギターの方です

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2024年

4月

03日

月組 Eternal Voice/Grande TAKARAZUKA 110!

壁の飾りをかえました。月組宝塚大劇場 2024年3月30日〜5月12日

『Eternal Voice 消え残る想い/Grande TAKARAZUKA 110!』

「Eternal Voice」は月組トップコンビ、月城かなとさん、海乃美月さんの退団公演です。ヴィクトリア女王時代の英国が舞台、謎解きと超能力を組み合わせたファンタジー物語。開始から引き込まれる展開なのだが、途中から複雑になってきて、ちょっと油断している間に話についていけなくなってしまった。

ぜひ予習しておくことをお勧めします。プログラムを購入し「第〇場~誰それが~する」のページをラストまで通読し、できればホームページで人物相関図まで頭に入れて観劇するのがお勧めです。

個々の場面をみると、渋~い台詞のやり取りあり、コミカルな場面もあり、さすが芝居の月組だなあと感銘をうけます。あと何回か観ます。

「Grande TAKARAZUKA 110!」これこそ宝塚という豪華なショーです。プロローグから衣装も踊りもゴージャス。中詰めのスペイン・ショーでは次々に銀橋で歌い継ぎあり、下級生まで銀橋渡りして嬉しいです。そして客席降りもあって大盛り上がりでした。さらに今回退団者5名の銀橋渡り場面に泣きます。演出の中村先生、退団者へ思いやりがこもっています。

風間さんの歌に続いて、初舞台110期生のロケットは長丁場の構成。フォーメーションが複雑かつ変化が目まぐるしく、完成させるのが難しかったんじゃないかな。

雪月という場面では月城さんの来歴が歌詞になっていてしみじみとしますね。

男役群舞は伝統の黒燕尾、月組ならでは渋い男役の魅力です。大階段の真ん中に月城さんが立ち、整然と男役たちが囲む、これだけで感動。

そして「My best friend」それはそれは泣けてしまう名場面ですよ。

豪華&涙のショーでした。

皆様機会がございましたらぜひ月組の舞台をご覧になってください。(2024.4.3院長)

 

カテゴリ 宝塚

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2024年

3月

20日

ジャパニーズ・ガレージロック シャープホークス

壁の飾りをかえました。まだまだGSは続きます。

シャープホークス「レット・ミー・ゴー!」昭和42(1967)年12月20日作詞作曲:野沢裕二、編曲:三根信宏

 GSとは狭義には「楽器を演奏しながら歌うグループ」なんですが、ここはやや異色で、「シャープホークス」の4人はコーラスグループ、そしてバックバンドが「井上宗孝とシャープファイブ」と別々なのです。

 元々は「ハーフかつ歌って踊れるアイドルグループ」を売り出すコンセプトだったらしいです。80年代世代にはおなじみ安岡力也さんがリーダー格なんですよ。

 メンバー、安岡力也(リキヤ)、野沢裕二(トミー)、鈴木忠男(サミー)、小山真佐夫(アンディ)の4人が「ついておいで」(昭和41年9月)でシングルレコードデビュー。昭和42年前半、小山真佐夫→ジミー・レノンに交替、以後もメンバー交替を繰り返す。

 演奏はリーダー井上宗孝(ドラム) 、三根信宏(1)(ギター) 、古屋紀(ハモンドオルガン) 。1965~66年テレビ「勝ち抜きエレキ合戦」の模範演奏バンドとしてレギュラー出場、別格の実力派バンドなのです。

 本曲は5枚目シングル。サウンドについては、ビート系です。本作のあと68年頃からGS界では歌謡曲調が増えますが、まだそうなる前で洋楽を意識した音作りです。歌については粗削り、上手とは言えません、パワフルさと勢いで乗り切っちゃう。演奏はほんとシッカリしています。井上さんのタイトなドラム、三根さんのファズギターがイントロのフレーズから惹きつけてきます、曲中のギターリフも前ノリで引っ張っててカッコイイんです。ファン歓声を間に入れ、ライブの熱狂感を創り出しています。

 実はこうしたサウンドが後年(1980-90年代)外国で「ジャパニーズ・ガレージロック」とか「ガレージパンク」として高く評価され逆輸入されたことがあるのです。

 日本ガレージ・ロックの名作、シャープホークス(2)・シャープファイブ、皆様機会がございましたらぜひお聴きください。(2024.3.20 院長) 

 

(1)三根信宏さんは、昭和ジャズの帝王、大歌手ディック・ミネさん(参考、宝塚歌劇花組 鴛鴦歌合戦)の息子さんです。

(2)その後の経緯です。内部で68年シャープ・ファイヴが独立しレコード会社を移籍したり、外部要因としては演奏しながら歌うスタイルのバンドが激増しGSブーム主流になったりと、そのような理由で、シャープ・ホークスは徐々に勢いが弱まり、69年に解散となりました。

 

カテゴリ 音楽

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2024年

3月

06日

ザ・タイガース「シー・シー・シー」

壁の飾りをかえました。ここしばらくGSがつづきます。

ザ・タイガース「シー・シー・シー」昭和43年(1968)7月作詞:安井かずみ・作曲:加瀬邦彦

 タイガース6枚目のシングルです、50万枚も売れたそうです。タイガースはデビューから橋本淳・すぎやまこういちコンビの作品で、王子様キャラクター、ロマンチック世界観、哀愁メロディー、ストリングスで盛り付けた曲が多いです(1)。また当時のファン層もそれを期待していたのでしょう。渡辺プロダクションが需要に応じて売り出すという、商業戦略の一環でもあるのです。

 一方、ロックバンドのビート系作品としては2枚目「シーサイドバウンド」と6枚目本作「シーシーシー」ですね。本作は作詞作曲がかわり、安井・加瀬(2)コンビで新しい風を取り入れようということなのでしょう。

 1964-66年頃流行したマージビート、ブリティッシュビートを思わせるノリの良い曲です。ジュリーとメンバーのコール&レスポンス(歌の掛け合い)が英国風。サリー(岸部おさみ(岸部一徳))のベースもビートがあふれています。ついでに言うとサリーは声も低音が魅力。そしてギター(加橋かつみ)が初期ローリングストーンズの音色みたいなんですよ。ライブバンドであったタイガースの一面が伺える作品です。

 なおこのあと昭和44年(69年)グループから加橋が脱退し、また時代の流れから、作風がニューロックの方向へ進むことになります。

 皆様、ロマンチックだけではないGS、日本のロックの基であったGS、機会がありましたらぜひお聴きください。 (2024.3.6 院長)

 

(1)1st「僕のマリー」(1967年2月)歌謡系 作詞:橋本、作曲:すぎやまB面「こっちを向いて」50'sサウンド

2nd「シーサイド・バウンド」(67年5月) ビート系 橋本&すぎやま B面「星のプリンス」60'sアメリカン、スペクターサウンド的

3rd「モナリザの微笑」(67年8月)歌謡系 橋本&すぎやま B面「真っ赤なジャケット」マージービート系

4th「君だけに愛を」(68年1月)ビート+歌謡 橋本&すぎやま B面「落葉の物語 」ロマンチック系

5th「花の首飾り/銀河のロマンス」(68年3月) 歌謡系 橋本&すぎやま 両A面

6th「シー・シー・シー」(68年7月)ビート系 作詞:安井、作曲:加瀬 B面「白夜の騎士」メルヘン王子様系 

 

(2)ワイルドワンズの加瀬邦彦さん、深夜まで飲んで早朝4時に帰宅すると、事務所から電話が鳴り「今から9時までに曲を作ってくれ」と頼まれたそうです。無茶ぶりですが、5時間で作りあげた曲なのに名曲だと思います。加瀬さんスゴイ! なお安井&加瀬コンビは70年代ジュリーのソロ活動で名作を多く残します。

 

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2024年

2月

21日

花組「アルカンシェル~パリに架かる虹~」

壁の飾りをかえました。

花組「アルカンシェル~パリに架かる虹~」2024年2月10日-3月24日 宝塚大劇場

 柚香光さんと星風まどかさんトップコンビ退団公演です。1本物なので柚香さんの華麗なダンス見せ場が少ないのではと心配でしたがそれは杞憂、レビューシーンがふんだんに盛り込まれています。プロローグから王道レビューシーン、柚香さんは黒燕尾とシルクハットが似合いますね。続くピエロ・ダンスも柚香さんの表現力がスゴイ!道化師の悲哀が伝わってくる。そしてこのピエロは後の伏線にもなるのです、しっかり観ておいてください。

 星風まどかちゃんは宙組から長年トップを務め堂々の風格、そして安定の歌唱で聴きごたえあります。なにより柚香さんを慕う仲良い雰囲気に満ち、観ている者を幸せにしてくれます。

 パリ占領軍文化統制副官フリードリッヒを永久輝せあさんが快演。ナチス軍人だが、純粋に音楽と演劇が好きで、アルカンシエル劇団に好意的なのが良く伝わってきます。次期トップさんに決まっていてこれからの活躍も楽しみです。

 ドイツ文化統制官コンラート・バルツァーは専科から凄腕の輝月ゆうまさんが演じます、サイコパスなナチス将校の演技が光ります。輝月さん巧すぎ!そして部下のナチス親衛隊マックス(紅羽真希さん)とエミール(泉まいらさん)が冷酷ナチスの面と、コンラートに頭が上がらない部下というコミカルな面があっていい味なのです。なお、紅羽さんはダイナミックなダンスで魅せる方で、ナチスのソ連侵攻場面やフィナーレでの踊りに注目。またエミールの泉まいらさんは後でナチスのコルティッツ総司令官(1)に役替わりします、これまた燻し銀の演技です。宝塚大劇場だけでの役なのでぜひご注目ください!

 今回退団される帆純まひろさん、華麗な美人男役、劇団員としてソロ歌唱ありピエロ姿での前転あり見せ場が多くありました。銀橋で柚香さんから「一緒に舞台を作ってきた仲間じゃあないか」とねぎらわれる場面が涙を誘います。

 花組は注目のジェンヌさんが多いです、最近とくに愛乃一真(まのかずま)さん、この人の踊りに双眼鏡が釘付け。速い動き+ピタッと静止+抜群の体幹安定、そしてポーズ時の角度、とにかくスゴイです、ぜひご注目ください。レジスタンスの踊りがキレッキレです、ぜひご注目ください!ラテンナンバー・ココナッツパラディでは手に持つマラカスを止めるタイミングそして腕と脚の角度までが完成された芸術です。

 なお若手の光稀れん(こうきれん)クン108期もご注目ください!下級生ながらすでに男役の貫禄があるのですよ。今回はアルカンシエル劇場の冒頭シーンで7(セット)シャルマント(=7人組ロケットダンサー、赤色ですぜひ見つけて下さい!)、そしてナチス兵士、ホテル舞踏会の客、パリ解放時の市民等、チョイ役ばかりなのですが、存在感が大きいのです。皆様ぜひ温かく応援してください!光稀れん(こうきれん)クンです。

 魅力たくさんの花組公演アルカンシエル、機会がありましたらぜひご覧ください。(2024.2.21院長)

(2024.3.23 追記)

サヨナラショー、観ました。とくに黒燕尾のフィナーレがよかった。柚香さん本当に伝統的黒燕尾が凛々しく合っておられます。これが観たかった、感無量です。

 

(1)コルティッツ司令官は実在の人物で、ヒトラーによるパリ破壊命令をはぐらかし、結局爆破しなかった。パリを救った男として後世に名を残し、後に映画化されました(2014年「パリよ、永遠に」)。

 

細かい見どころ

(1)主人公マルセルが住む質素な部屋。梁が斜めであること、壁が石のままであることからパリのアパルトマン最上階の屋根裏部屋、つまり安い部屋にしか住めないことを表しています。構造上、最上階は天井が斜めで部屋が狭いことが多く、また昔の建物はエレベーターがなかったので昇り降りが大変、そのため最も家賃が安い階なのです。

(2)劇中に大道具(書割)の裏面が出てきます。上にcôté cour、下の方にcôté jardinと書いてあります。これは上手・下手の区別です。上手はcôté cour (コテ・クール)、下手が côté jardin (コテ・ジャルダン)です。

(3)劇中背景のパリ市地図に御注目ください。道路や施設が昔の名称なんです。パリ旅行したことがある方、見たことのない地名が載っています。双眼鏡で確認してみてください。

旧Avenue(以下Av.) Alexandre-III(アレクサンドルIII世通り、ロシア皇帝)→1966年~現在Av. Winston-Churchill(英国チャーチル首相)、なおアレクサンドルIII世橋は「アナスタシア」で重要な場所でした。

旧Av. d'Antin(劇中の地図)→1918第1次世界大戦後からAv. Victor-Emmanuel III(イタリアの王)→第二次世界大戦では敵国になったので戦後に名称変更→1945年Av. Franklin D. Roosevelt(米国大統領ローズヴェルト)、この通り沿いに戦後の名レストラン・ラセールがあります。

旧Av. d'Alma(アルマ通り、1854クリミア戦争アルマの戦い勝利記念)→1918年~Av. George V(イギリス王ジョージV世、第一次世界大戦で英国とフランスが同盟国で戦った、ジョルジュ・サンク通りは今は高級ブランドと高級ホテル(フォーシーズンズ・ジョルジュサンク)の通リです。

 劇中の地図には出てきませんがアイゼンハウアー将軍通り(ノルマンディー上陸作戦の司令官,、後に米国大統領)もあります。フランスは戦争のとき英国と米国に助けてもらったので恩義に感じているということなのでしょう。

(4)ドイツ軍総司令部はホテル・ムーリス(Le Meurice)にありました。チュイルリー庭園の向かいRue de

Rivoli (リヴォリ通り)にあり。いまもパリを代表する高級ホテルとして輝いています。

 

(追記2024.3.23)

カテゴリ 宝塚歌劇

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2024年

2月

07日

ゴールデンカップス「本牧ブルース」

壁の飾りをかえました。ひきつづき60年代GSの話です。

ザ・ゴールデン・カップス「本牧ブルース」昭和44年2月 作詞:なかにし礼、作曲:村井邦彦、6枚目のシングルです。

ゴールデンカップス(以下カップス)は横浜で結成されたバンド(1)。アイドルGSとは異なり、リズム&ブルース寄りの洋楽を志向していました。それもかなりマニアックであったようです。

GSとしてメジャーデビューしたために、シングルレコードではブルースとロックは控えさせられ、職業作詞作曲家が書いた歌謡曲的作品を出していました。有名な「長い髪の少女」は典型です。ただし、LPレコードは洋楽カバーがメインです、「洋楽の東芝」だから本人たちの希望する音楽を許してもらえたのでしょうか?ライブ演奏はほぼ洋楽中心でやっていたことが後年に再発された音源や動画などから明らかになっています。

そんな流れで本作も歌謡曲寄り作品と言えます。しかし、ブルース&ロックが滲み出てくるのがカップスらしいところです(2)。ソウルフルなデイヴ平尾の歌唱、ギターもファズがかかってハード。そしてカップスと言えばルイズルイス加部のベース!ものすごい迫力でウネっています(3)。キーボードは後に「ゴダイゴ」でも活躍するミッキー吉野さんです。

ロックと歌謡曲の間で苦悩する姿こそGSの醍醐味と言えましょう。

皆様、機会がございましたら、ぜひゴールデンカップスを御鑑賞ください。(2024.2.7院長)

 

(1)横浜市 本牧のレストランバー「ゴールデン・カップ」で演奏したのがはじまりです。

(2)「銀色のグラス」もぜひ聴いてください。

(3)加部さんのベースはあまりにメロディアスなため「リードベース」と言われることがあります。

 

カテゴリ 音楽

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2024年

1月

24日

スパイダース「太陽の翼」

壁の飾りをかえました(1)

昨年後半は80年代ばかりでした。今年は院長の好きな60年代GSから始めます。

ザ・スパイダース「太陽の翼」昭和42年3月 作詞・作曲:利根常昭

9枚目シングル。この作品、日本航空世界一周路線開設を記念した曲なんですよ。当時の日航はイケイケだったんですね。そういうわけで「太陽」の「翼」なんですよ。

スパイダースは昭和40年「フリフリ」でレコードデビュー、「ノー・ノー・ボーイ」「ヘイ・ボーイ」「サマー・ガール」と立て続けに英国ロックサウンド(2)志向の曲を出しました。ただロックを前面に押すと当時はなかなか受け入れてもらえなかったのです。なので歌謡曲風も入れないといけないということになるのです。ロックを演りたいがそれだけではお客がついてこない、売上にはつながらぬ、当時のGSは皆この悩みを抱えていたはずなのです。

スパイダースは浜口庫之助を起用し歌謡曲調の「夕陽が泣いている」昭和41年9月で大ヒット。カントリー調の「なんとなくなんとなく」をはさみ、歌謡曲調かつ日航タイアップでヒットを狙っての本作「太陽の翼」リリースなんでしょうね。

メロディーラインは歌謡曲テイスト、歌詞世界は青春もの(3)であるものの、演奏は完全にロックです。まずギターにはファズ(4)がかけられていてハードなサウンド、リードギター井上堯之さんかっこいいぜ。田辺昭知さんのドラム、フィル・インがめちゃピシッと締まってるんですよ、ここはよく聴いてください。そしてハモンドオルガン大野克夫さんのノリもすばらしい。そしてロックを志向したかまやつさんのプロデュース力。スパイダースの演奏ってGS内で突出して技術高くかつロックなんですよ。彼らの音楽的素養をもってこそ歌謡曲風メロディーをロックにつくりあげることができるのです。

ロックと歌謡曲の間で苦悩しバランスをとる姿こそGSの醍醐味と言えましょう。

皆様、機会がございましたら、ぜひスパイダース・サウンドを御鑑賞ください。(2024.1.24院長)

 

(1)ジャケット写真、カッコイイですね。GSと言えばミリタリールック(軍服風衣装)!ビートルズのサージェントペッパー衣装からの連想なんでしょうか?なぜか日本のGSも軍服が採用されるという変テコ安直な流れです。

(2)マージービート、リバプールサウンド、ブリティッシュロック等いろんな分類があります。

(3)当時はなんだかんだ言ってヨナ抜き歌謡曲調と青春モノが一般大衆にうける要素でした。

(4)音を歪ませるエフェクターのこと。ファズは60年代に流行りました。ゴールデンカップス「銀色のグラス」、ローリングストーンズ「サティスファクション」のイントロの音がファズです。類似のものにディストーションとかオーバードライブがあります。

 

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2024年

1月

17日

星組「RRRアールアールアール/VIOLETOPIAヴィオレトピア」

壁の飾りをかえました。

星組「RRRアールアールアール/VIOLETOPIAヴィオレトピア」宝塚大劇場2024年1月5日~2月4日

お芝居の「RRR」は原作の3時間インド映画を半分の時間にまとめて舞台化したものです。本当に楽しめる作品で、90分があっという間に過ぎました。トップ礼真琴さん、上手すぎる!そして今の星組メンバーだからこそ成し得た充実の作品です。

ストーリーは院長の好きな、男の友情もの。ビーム(礼真琴)とラーマ(暁千星)は、友情か?裏切るのか?民族自立の使命か?苦しい選択を迫られる、泣かせるぜ。そして今回は宝塚的な恋の要素は少ない目ながら娘役ジェニー(舞空瞳)とシータ(詩ちづる)かわいいです。

随所にダンス、コーラスありショー的要素あり、途中であきさせることがないです。圧巻の見せ場はやはりナートゥダンス、礼さん暁さんのダンスがものすごい!星組総踊りが大変な熱量でした。

礼さんが鞭打ちを受けても絶対に倒れない根性シーンも見どころです。なお最近礼さんは立て続けに作品内で鞭で叩かれているのが心配なところです。

なお、心情、戦乱、火災、などを、火の精と水の精みたいな役が踊りで表現するのですが、このダンスもすばらしい。よく見てると火の精「FIRRRE」の鳳花るりなさんの踊りがキレキレです。

原作を観ていませんがわかりやすく楽しめる作品です、谷貴矢先生、天才です。

ショーの方は「ヴィオレトピア」不思議な時間空間世界を描いているように思います。舞空瞳さんの黒燕尾姿、とてもかわいいですね。暁さんの女装はとても迫力。

印象に残るのはサングラス群舞、近未来世界を感じます。この場面、曲がカッコイイんですよ。

今回で退団の天華えまさんの場面もたくさんあって感慨深いです。スーツ姿でソロ銀橋渡り、スター天華さんの美学が詰まっていました。フィナーレ、エトワールも天華さんが務め感動しました。

充実の星組公演、機会がございましたらぜひご覧ください。 (2024.1.17院長)

 

カテゴリ 宝塚歌劇

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2024年

1月

07日

整数比直角三角形とtan2倍角の秘密

今年もよろしくお願い申し上げます。

ひさしぶりに受験数学の話です。整数比直角三角形の性質についての話です。ブログでは数式や図を書けませんので画像貼り付けになっています。 興味を持っていただけましたら幸いです。式や図が長いのでスマホよりパソコンの方が見やすいと思います。広い画面で見たい方は記事の一番下のPDFファイルをご覧ください。(2024.1.7院長)

 

カテゴリ 受験

 今回は整数比直角三角形の性質についての話でした。

なお2013年センター試験数IA第3問は、解けなかった受験生が続出し平均点を大きく下げ(例年60点台→51点)"以前は"伝説の入試問題のひとつと言われていました。ところが共通テストに替わり大幅に難化、特に2022年は多数の地獄問題が出題され平均点38点を叩き出し、新たな伝説を創り出しました。受験地図は大きく変わりました。もはや共通テストでは3:4:5の直角三角形なんて素直な出題はされない気がしてきました。高校入試ではまだ役に立つかもしれません。受験生の皆さまがんばってください。

広い画面で見たい方はいちばん下のPDFファイルをご覧ください。

 

参考:受験の月「伝説の大学入試問題(数学)」

こちらもご参照ください。

 

カテゴリ 受験 2024年

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2024.1.7ブログPDF
整数比直角三角形とtan2倍角の秘密
整数比直角三角形とtan2倍角の秘密.pdf
PDFファイル 310.1 KB

2023年

12月

20日

80年代のクリスマス・イブ

 壁の飾りをかえました。山下達郎「クリスマス・イブ」昭和58年(1983)

 早いもので今年もあとわずかになりました。ふり返りますと今年は7月からずっと80年代音楽の話を続けておりましたので、80年代を代表するクリスマス・ソングで本年のブログをしめたいと思います。

 もう誰もが知る名曲です。初めてリリースされたのは1983年9月アルバムの1曲でした、83年12月にシングルカット、86年に再度シングルカット(この写真の盤です)。88年にJR東海のCM「クリスマス・エキスプレス」(1)に採用され爆発的に有名になりました。80年代後半の空気がよく伝わってくるCMでした。

 さてこの名曲には「カノン進行」というコード進行が使われていて、ベース音が順番にドシラソファミレと下がっていくのです。これが、スムーズな流れと優雅な響きををもたらすのです(2)。間奏にはパッフェルベルの「カノン」そのものが使われていて、山下さんによる多重録音アカペラつきです。曲全体が荘厳な雰囲気で本当にクリスマスにピッタリですね。

 そして歌詞世界も文学的です。「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」なんて奥行きのある世界。さらにすごいなあと思うのが韻を踏まえた言葉選び、「きっと君は来ないひとりきりのクリスマス」→キ→キ→コ→キ→ク、「叶えられそうもない/必ず今夜なら」カナ→カナ、リズムとつながりを感じます。

 曲も詞も山下達郎さんの才気が隅々まで詰め込まれた作品です。

 2023年もブログにおつきあいくださりありがとうございました。皆様よいクリスマスをお過ごしください、そして幸せな新年をお迎えください。2023/12/20(院長)

 

(1)88年  深津絵里(この年だけホームタウン・エクスプレスX'mas編という名称)、89年  牧瀬里穂、90年  高橋理奈、91年  溝渕美保、92年  吉本多香美

(2)この曲はキーAで、A →E/G#→F#m7→E6→DM7→C#m7→Bm7→E 、度数で言うとI→V/VII→VIm7→V6→IVM7→IIIm7→IIm7 →Vで、このI(ド)→VII(シ)→VI(ラ)→V(ソ)→IV(ファ)→III(ミ)→II(レ)という風に順番に下がるので順次進行とも言います。2番目のV/VIIって何?と思うかもしれません、Iの次にVを置くのはトニック→ドミナントの定番進行なのですが、これだとベース音が「ソ」になります、ここでVの転回和音を持ってくる工夫をするとベース音が「ド」から1個下の「シ」VIIにできるのです。

転回和音とは、例えばIをドミソとするとVはソシレですが→下のソを1オクターブ上げてシレソにして鳴らすのが第1転回形と言います。そしてこの和音の最も低音が「シ」つまりVIIになるのです。

同様にして他の和音も転回形を利用してベース音が1個ずつ下がるように作られた進行なのです。

 カノン進行はアレンジを加えながら多くの曲に使われています。

 

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2023年

12月

06日

雪組「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAY」

壁の飾りをかえました

宝塚雪組「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAY」

 遅れに遅れての開幕でした。様々な葛藤がある中で、雪組の皆さん本当に頑張っておられました。

 芝居「ボイルド・ドイル」はコミカルで笑いの場面が多数。大きな本のセットが素敵でした。ショーの要素が多く、ミュージカル仕立てです。

咲ちゃん(彩風咲奈)とアーサ(朝美 絢)の掛け合い、咲ちゃんと和希そらの掛け合いも、芝居の流れがとても良かったです。

 咲ちゃんは、志と現実と運命にはさまれ苦悩する役が多くて、そこの芝居に私院長はいつも心打たれます。そして妻エリーザを演じる夢白あやちゃんがかわいい、優しくて健気でアーサー・コナン・ドイルを支えるのですよ。

 今回で退団の和希さん、この人は渋い声、カッコよくてユーモアもあるイケメンオヤジ、引き込まれます。男役のひとつの完成形ですね、やめるのが本当に惜しい。そういえば「会社を退職させてもらいます!」というセリフがあって、周りが全力で止める場面があります。みんな和希さんにやめてほしくない気持ちが伝わってきます。

縣千のメイヤー伯爵はニセ降霊術や催眠術をつかう、胡散臭さ満載、笑いのポイントでした。

 ショーは「FROZEN HOLIDAY」クリスマスとお正月気分が満載、とにかくメリクリあけおめがずっと続く。演出の野口先生は往年のMGMミュージカル的豪華なショーが得意。今回も大人数使いのシーンが多数あり、本当に華やかです。目が迷子になりそうです。手足が長くてダンス上手の咲ちゃんが映えます。そして退団する和希そらさんの場面がすばらしい!説得力ある深い歌唱、そしてダンスは白い蝶が舞っているかと思った。咲ちゃんとのデュエットダンスあり。ファンは泣いて笑って忙しいでしょう。他にも朝美絢のサンタクロース、縣千のラッパーなどユニークな場面あり。

 見どころたくさん、明るく楽しいハッピーなショーです。皆様機会がございましたら、ぜひ素晴らしい雪組の舞台をご覧ください。 (2023.12.6院長)

 

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2023年

11月

08日

テクノサウンドの普遍化「Romanticが止まらない」

壁の飾りをかえました。

C-C-B「Romanticが止まらない」昭和60(1985)年

 この曲、作った人たちが豪華!作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:船山基紀、プロデューサーは筒美先生の実弟の渡辺忠孝さんです。

 何といっても笠浩二さんがシンセドラムを叩きながら歌うスタイルが強烈なインパクトでした。彼らのファッション、髪型、メガネも印象的でしたね。笠さんの透明な高音も魅力でした(1)。

 イントロのシンセサイザー・サウンドから心を鷲掴みです。歌謡曲的なキャッチーなメロディ、テクノを導入し、ファンクの要素もある。当時の洋楽で言うと英国のニューウェイヴのような構成なんです。筒美メロディーは先端のものを取りこんで歌謡曲、アイドル、何でも創作されていましたからスゴイです。

 テクノ音楽の黎明は78年結成のYMOが実験的音楽にはじまりました(4)。3年後の81年にはすでにテクノは世の中に受け入れられていたわけです。このあとデジタル音楽技術は幅広くポピュラー音楽に浸透し大衆社会に消費されてゆきます。

 前回記事でお話したようにテクノサウンドは78年頃から始まり81年にはすでに世の中に受け入れられてきました。85年になると本曲のように歌謡曲にも組み込まれるようにもなったわけです。このあたりテクノサウンドが普遍性を持つようになってきた過程を見ることができます。このあと、CDの実用化、カラオケの普及、バンドブーム、J-POPなどにより日本の音楽は変化してゆきます。

 皆様機会がありましたら、C-C-Bの名作「Romanticが止まらない」もう一度お聴きください。(2023.11.8 院長)

 

(1)当初、笠さんはリードボーカルの予定でなかったそうです。レコードジャケット写真で笠さんが端っこなのがそれを物語っています。筒美京平さんが「この子の声で行く」と決めたそうです。

 

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2023年

10月

25日

80年代テクノ「ハイスクールララバイ」

 壁の飾りをかえました。前回の一風堂に続いて80年代電子音楽です。

イモ欽トリオ「ハイスクールララバイ」昭和56年(1981)作詞:松本隆、作曲:細野晴臣

 TVバラエティ「欽ドン!良い子悪い子普通の子」のメンバー、山口良一(ヨシオ)、長江健次(フツオ)、西山浩司(ワルオ)のシングル曲です。オリコン7週連続1位獲得、累計160万枚を売り上げる超大ヒットだったのです。こんなに売れていたとは知らなかった!(1)。

 YMO細野さんのメロディーがキャッチーであったこと、山口(ヨシオ)と西山(ワルオ)の掛け合いパフォーマンス(2)が大人気の理由だったと覚えています。

 曲は典型的初期YMOテクノサウンドです。「ライディーン」風のイントロから入ります、ハイハットのリズムが気分揚がりますね!シンセサイザー音がこの時代的です。山口さん(ヨシオ)はシンセ演奏の物まね担当。当時まだアナログシンセが主流、大きなコントロールパネルがついていて、YMO坂本教授はキーボード演奏しながら頻繁にダイアルやスイッチを触っていた、これをよく真似ています。時代を反映していますね。このあと83年頃からデジタルシンセが普及し(3)音色変換が簡略化され手元だけで済むようになりました。

 テクノ音楽の黎明は78年結成のYMOが実験的音楽にはじまりました(4)。3年後の81年にはすでにテクノは世の中に受け入れられていたわけです。このあとデジタル音楽技術は幅広くポピュラー音楽に浸透し大衆社会に消費されてゆきます。数年後にはユーロビート流行、簡易な音楽作成手段としてのカラオケ伴奏やスーパーマーケットのBGMにまで広まるといった具合です。

 80年代は様々なサウンドが発展した時代です。デジタルサウンドが広まり始めたきっかけである「ハイスクールララバイ」、機会がありましたらぜひお聴きになってください。(2023.10.25 院長)

 

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(1)デイリー新潮2023.9.30 「西山浩司が語る「イモ欽トリオ」秘話 ハイスクールララバイは160万枚売れたのに音楽賞はゼロ、紅白にも出なかった理由」

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/09301106/

(2)長江のレコーディング中、暇だった山口と西山が、ふざけてスタジオでYMOの演奏真似をして遊んでいたものが採用された(Wikipediaより)

(3)83年にYMAHAがデジタルシンセDX-7を開発し一気にデジタル化が進みました。当ブログ「桑田佳祐さんがGSに捧げるオマージュ」

(4)当ブログ「YMOの功績 ライディーン」

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2023年

10月

11日

開院10周年をむかえました

開院10周年をむかえました

おかげさまで、まきの内科クリニックは開院10周年を迎えることができました。

これまで支えてくださいました皆様に心より感謝申し上げます。

またこれからも地域の医療のため、一層努力してまいる所存です。

今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

(2023.10.8 院長)

 

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2023年

9月

20日

80年代の熱気「すみれ September Love」

9月も下旬というのに暑いですね。

一風堂「すみれ September Love」昭和57年(1982)作詞:竜真知子、作曲:土屋昌巳

 前回のNENA(ネーナ)大ヒットは1984年の話でしたが、その少し前、日本ではこんなことが起こっていました。小林克也ベストヒットUSA(1981年10月~)やSony Music TV(1983年12月~)で洋楽が身近に広まり、邦楽においては1980年にニューミュージックが衰退傾向、アイドル全盛時代に入れ替わりました。他方1978年からのYMOをはじめとするテクノ・ミュージック、そしてその流れをくむニューウェイヴ(new wave)・サウンドが80年代初めから台頭しました。

 一風堂はこのニュー・ウェイヴの嚆矢ともいえるロックグループです。まずビジュアルからして奇抜かつオシャレ。髪型、お化粧、衣装とも当時の最先端でした。近寄りがたいアーティスティックなオーラを感じました。もちろん音楽も、歌謡曲やアイドルはもとより商業系洋楽ロックとも違って芸術性高い感じでした。まあニューウェイヴというのはマイナーでちょっとわかりにくいって所に値打ちがあるというように認識されていた気がします。

 この作品は企画段階からカネボウのCMタイアップ曲(2)と決まっていてレコード会社と事務所による全く商業主義だったわけです。CMの効果もあり大ヒットしました(オリコン最高2位、年間売上21位)。芸術家肌の土屋昌巳さんがよくOKしたなあと思います。楽曲はファンク・リズムに軽快なサウンド、メロディーがキャッチーですからそこが大ヒットにつながったのでしょう。ここに土屋さんギターの技巧が光ります。そして当時最新のデジタル・テクノロジーをふんだんに使い、最新鋭サウンドを作っていたわけです(3)。ちょうどこの82年頃から急速にデジタル化が進み、様々な実験的なサウンド作りが広がり、その後の80年代音楽シーン全盛へ向かったように思います。

 ともあれ今2023年に改めて聴いても古さを感じさせない、不思議な魅力を持った曲です(4)。皆様、ぜひ一風堂(5)の「すみれ September Love」をお聴きください、そして80年代音楽シーンの熱気を感じてください。 (2023.9.20 院長)

 

(1)ニューウェイヴはメジャーレコード会社ではなくインディーズ(独立系小規模会社やレーベルのこと)での活動が多かったように思います。

(2)カネボウ化粧品「レディ80・パウダーアイシャドウ」のコマーシャル、ブルック・シールズが出演。この時代の日本は本当にお金があったのですね。

(3)ドラムパートは土屋さんがPCM音源を用いたサンプラーで打ち込んだとされています。

(4)土屋さんはこのあと商業的作品制作から離れ、自らのスタイルで創作活動を続けておられます。多方面にわたる才能を持った天才だなあと思います。

(5)なお余談ですが、ラーメンの「博多一風堂」は 当バンド名が店名の由来となっていることが本人たちの対談で明らかにされています。

 

関連年表

81年10月ベストヒットUSA放送開始

82年10月CD(コンパクト・ディスク)発売開始

82年10月 MIDI 1.0 規格(電子楽器の演奏データを機器間で転送・共有するための共通規格)

83年5月デジタルシンセサイザー ヤマハDX-7発売

83年7月任天堂ファミリーコンピューター発売

 

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2023年

9月

06日

東西対立と80年代洋楽サウンド ネーナNENA

壁の飾りをかえました。

ネーナ「ロックバルーンは99」原題"99 Luftballons"(1) 1983年

演奏NENA、作詞カーゲスCarlo Karges、作曲ファーレンクロッグ=ペーターソンJoern-Uwe Fahrenkrog-Peterson作曲。

前回ブログ宝塚月組「フリューゲル」は1980年代東西ドイツ対立がテーマでした。思い出すのは、80年代ってまだ東西冷戦が常に身近にあったなあということです。1970年生まれ以上くらいの世代の人は皆この感覚を共有しているんじゃないかと思います。

そんな社会背景での1984年大ヒットです。西ドイツのロックバンド、NENAネーナの本作はまず西ドイツ国内で1位の大ヒット、そして偶然米国カリフォルニア州のラジオDJの耳に留まり放送したところ全米に拡散しビルボード2位まで上昇、さらに世界中でヒットします。日本でもSony Music TVや小林克也ベストヒットUSAでのミュージック・ビデオ流行に乗ってバカ売れしました。懐かしい。

わかりやすい明るいメロディー(2)のポップです、シンセサイザーがとても80年代的、チョッパーベースもゲート・リヴァーブを利かせたスネアドラムも80年代サウンド、懐かしい。歌手のネーナ(本名Gabriele Susanne Kerner)はアイドルのルックス、かわいかった!ドイツ語の響きが新鮮でした。英語以外の曲がTop10入りすることは極めて稀なのだそうです。

きわめて明るい楽曲に対して、歌詞は東西対立を風刺し反戦を訴えているのです(3)。80年代当時ってことあるごとに東西が対立し不安定でした。改めて聴くとあの頃の複雑な空気を思い出します。

皆様ぜひこのNENAをお聴きになって80年代のサウンドと空気を感じてみてください。(2023.9.6 院長)

 

(1)原題は「99個の風船」というシンプルな意味。邦題のつけ方はちょっと赤面するダサさですね。

(2)よく聴くとこの曲、メロディーは2つしかなく、大半がAメロの繰り返しなんですよ。これですべて押し切るとは力技です。同時期日本のシティポップの技巧的なサウンドとは対象的です。まあメロディーの力と時代の空気が後押ししたのですね。

(3)歌詞和訳サイトなども御参照ください

 

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2023年

8月

23日

宝塚月組 フリューゲル/万華鏡百景色

壁の飾りをかえました。

月組「フリューゲル/万華鏡百景色」8/18〜9/24 宝塚大劇場

 ミュージカル「フリューゲル」は齋藤吉正先生の作、ベルリンの壁崩壊1年前の話です。ベルリンの壁崩壊と民主化へ向かう東ドイツが舞台。東独軍人ヨナス大尉を月城さん、西ドイツのポップスター(1)、ナディアを海乃さんが演じます。ヨナスがはじめはもう堅物でマジメすぎなのが、ナディアと打ち解ける過程で変わってゆきます。このあたり月城さんの芝居が上手いです。ナディアは西独のアイドル、ワガママでオテンバで、ヨナスが何かと振り回されるのもコミカルで楽しい。

鳳月杏さんは国家保安省のヘルムート役、東ドイツの社会主義を守ろうとする狂気の演技が巧い。対して西側芸能マネージャーのルイスを風間さんが演じる、これがはじめチャラいキャラで笑いを誘うのですが、芝居が進むにつれ変わっていくんですよ、これも風間さんの演技の味わいです。ヨナスの母エミリアも鬼気迫る演技。

さすが「芝居の月組」で、幼少時代(2)や、市民や学生たち、警官、軍人も各所で細かい芝居をしていて目が離せないです。

 ショー万華鏡百景色は栗田優香先生の大劇場デビュー作。江戸からはじまり現代までの東京を舞台にしたショーです。芝居仕立てになっていて各時代のストーリーがつながっていくという構成です、これも面白い。ピンクの衣装の中詰め場面は1970-80年代日本のシティポップがテーマです。一定以上世代の日本人なら誰もが知っている、EPOさんの”Down Town”(3)で始まります。なつかしいわあ。

このほかにもみどころたくさんです。

皆様機会がありましたらぜひ月組の舞台をご覧ください。

(2023.8.23 院長)

 

(1)実際にこの当時西側アーチストの招聘公演がありました。

1988年7月、ブルース・スプリングスティーンが東ベルリンで上演、これはブルースが労働者階級の代表として招聘されたのです。本公演の女性ポップスターは誰がモデルなんでしょうか?NENA(ネーナ)?ニナ・ハーゲン?

(2)冒頭ヨナスの少年期を演じた朝香ゆららちゃん、とてもよかった!

(3)フジTV「俺たちひょうきん族」のテーマ曲です

 

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2023年

8月

02日

コード進行が同じ「ビーチタイム」

毎日暑いですね。壁の飾りをかえました。

TUBE「Beach Time(ビーチ・タイム)」昭和63年(1988)4月

作詞:亜蘭知子、作曲・編曲:織田哲郎

夏が来るとTUBEを聴きたくなりますね。

さてこの「Beach Time」は松田聖子「青い珊瑚礁」のカラオケで歌えることをご存知でしょうか。それはコード進行が全く同じだからなのです。この2曲が似ていることは昔から言われていて、いわばカラオケでのお遊び用ネタくらいに考えられていました。街の噂、つまり音楽好きアマチュアの間では「これはわざとやってるだろ」「いや偶然にちがいない」など色んな意見がありました。

実は当時のプロデューサー長戸大幸氏は意図的に完全にパクっていたと語っておられます。2021年エフエム滋賀のラジオ番組で長戸氏本人が、「TUBEのシングル曲「Beach Time」(1988)を、松田聖子の大ヒット曲「青い珊瑚礁」(1980)を模倣して制作したことを、明かした」のです(1)。長戸氏は「青い珊瑚礁」の元は有名な映画曲「慕情(Love Is A Many-Splendored Thing)」であり、さらにその源流はプッチーニ「蝶々夫人」であることを分析されています。それならば「青い珊瑚礁」に徹底的に似せて作ってみようとしてできたのがTUBE「Beach Time」というわけなのです。

聴いていただければわかると思いますが、アイドル曲をコード進行だけ流用したとはいえ、完全にTUBE独自のサウンドを作りだしています。そこには単なる借用というよりも、8年前のアイドル音楽は既に古いものとしてこれを完全に咀嚼し、一段高い視点から俯瞰して自由に使えているということです。これは相当な音楽的素養がないとできない技であります。すなわち日本のポップスがかなりの進化を遂げたことを表しているのだと思うのです。

実際、1980年からのアイドル黄金時代が終わり、1985年頃からバンドブームを経て日本の音楽は新世代になってゆき、80年代後半にはJ-POPという概念が確立しました。この時期から洋楽をあまり意識せずとも独自のポップスを作れるミュージシャンが激増しました。例えば長戸氏の音楽事務所ビーイング(2)の作りだした一連のアーティスト・作品がそうです。明治時代から始まった日本ポップスは長い間西洋音楽を自分のものにしようと努力を続けてきました(3)、昭和の終わりになってついに自国オリジナルの音楽を作り出せたように思います。

2023年の猛暑、日本ポップスの歴史に思いを馳せながら「青い珊瑚礁」と「Beach Time」の聴き比べして涼んでくださいませ。

まきの内科クリニックは8月11-16日まで夏休みをいただきます。

よろしくお願い申し上げます。 (院長 2023.8.2)

 

(1)https://being-music.net/2227/

TUBE「Beach Time」は松田聖子「青い珊瑚礁」を完全にパクった曲だった 長戸氏語る

(2)BEing 音楽事務所、85年TUBE、88年B'z、91年Mi-Ke、ZARD、川島だりあ、T-BOLAN、WANDS、92年大黒摩季 など

(3)「大瀧詠一のニッポンポップス伝」に詳しく歴史が語られています

カテゴリ 音楽

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2023年

7月

19日

花組「鴛鴦歌合戦/Grand Mirage!」

壁の飾りをかえました。

花組「鴛鴦歌合戦/Grand Mirage!」 2023/7/7~8/13 宝塚大劇場

 原作は昭和14年(1939)マキノ正博監督の日活映画です。映画は69分と短いので、宝塚向けに少し話をかえ、さらに総踊りもあってにぎやかです。

 オペレッタと言うだけあって歌で話を進めてゆきます。とりとめのない喜劇なのですが底抜けに明るい幸せな話で、難しいことを考えずに楽しめます。芝居中あちこちで笑いが起こりました。

 トップ柚香光さんは主役浅井礼三郎をが演じます、浪人、着流し、下駄でカッコイイ、原作の片岡千恵蔵さんばりに落ち着いた芝居です。娘主役の星風まどかさん、ヒロインお春を演じます、これが本当にかわいい。礼三郎のことが好きなのになかなか言い出せない。何かというとライバルの娘たちの邪魔が入ってはスネてしまう。「ちぇっ」のセリフが可愛いです。

 この芝居、面白いキャラがたくさん。骨董好きの峰沢丹波守を永久輝せあさんが快演します。バカ殿ぶりの芝居が楽しいです(1)。ヒロインのお父さん志村狂斎をベテラン和海しょうさんが演じます。この役は実質的に副主役と言ってもいいでしょう。骨董狂いのダメ父親なのですが娘のお春を愛しています(2)。和海さんは本当に歌が上手で、芝居では重厚な演技、色気があって、何でもできる花男(花組らしい男役さんのこと)です。今回公演で退団されるのが大変惜しいです。原作になかった殿様の弟、秀千代(聖乃あすか)のヘナチョコ若様と小姓の空丸(美空真瑠)のかわいい演技、このコンビも見どころです。特に銀橋の下から出てくる所は一瞬なのでお見逃しなく。

 楽曲は意図的に原作の曲をそのまま使っているようです。さすがに現代のファンが受け入れにくいのではないかと心配するものもあります。原作のスイングジャズ感を強調する編曲と楽器構成にすればもっとよかったなと思います。昭和歌謡を研究する身としては「僕は若い殿様」(=青い空僕の空)、「青葉の笛を知るや君」(=或る雨の午后)、「偉いぞ偉いぞ」(=東京スウィング)いずれも戦前ジャズの帝王ディックミネさん歌唱の名曲で胸熱ですわ。

 ショー「グランミラージュ」はこれこそロマンチックレビューの本質。パステルカラー、広つば帽子、総踊り、そして優雅な時間が流れます。中詰め「シボネー」は8分間の長丁場、高揚感のある舞台。名歌手、和海しょうさんが歌いあげるところはテンション上がります。星風まどかちゃんを一之瀬航季さんが一人で肩に担いで登場する場面、これは驚きです。そして総員踊りまくりの豪華な見所です!とくにシボネー後半で上手側、侑輝大弥さんが汗だくになって暑苦しい顔でダンスを繰り広げるのは男役的色気が圧巻!ぜひ注目ください。夜の街の場面(黄色の衣装)愛乃一真さん(まのかずま)のキレキレ・ダンスにオペラグラスが釘づけになりました!ロケットダンスは黒を基調とした衣装で腰羽根なしシックで大人っぽい。後半のボレロ・ルージュも情熱的でよかったな。そして永久輝さんの歌をバックにトップコンビがデュエットダンス、本当に優雅です。

 魅力たくさんの花組公演、機会がございましたらぜひご覧ください。(2023.7.19 院長)

 

(1)原作では大歌手ディック・ミネさん(だから殿の名も峰沢です)が演じ、楽曲「青い空僕の空」「或る雨の午后」「東京スウィング」をジャジーに歌うんですよ。

(2)原作では名優 志村喬さんが演じます。役名もそのまま志村さん。

 

カテゴリ 宝塚歌劇

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2023年

7月

05日

80年代アイドル黄金期の幕開け「青い珊瑚礁」

壁の飾りをかえました。7月なので夏らしい曲を。

松田聖子「青い珊瑚礁」昭和55年(1980)作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:大村雅朗

 三浦、大村コンビは昭和53年八神純子「みずいろの雨」で注目を集めました。ちょうどニューミュージックが全盛の年です。一方アイドル勢は不発が続いていました。その後昭和55年(1980)ニューミュージックがそろそろ下火になったころ、新しいアイドル松田聖子が「裸足の季節」でデビューしました。資生堂「エクボ洗顔フォーム」CMとタイアップし人気を上げます。2枚目シングル「青い珊瑚礁」は、松田の特長である伸びる高音を冒頭におくことで、印象を決定づけています。ここから立て続けにヒットを飛ばします。松田聖子の成功をきっかけに、80年代アイドルの時代が続きました。

 80年代アイドル・サウンドはニューミュージックの洗練を取り入れた新しいサウンドと言えましょう。70年代アイドルの音とは明らかに異なります。77~79年頃のニューミュージック全盛期、即ちアイドル低迷時代のギャップを経由したことにより70年代スタイルと隔絶できたのだと思います。

 作曲の小田裕一郎さん、初ヒットはサーカスのアメリカン・フィーリング昭和54年、滑らかで音の取りやすいメロディラインを持ちながらシティポップ的なセンスも高い(1 レコードコレクターズ2014年11月)こののちも多数アイドルに楽曲を提供。

 大村さんの編曲は清潔感があって軽やかです。当時のヤマハ系、ポプコンの特徴ともいえます、しかしよく聴いてみると楽器は多く複雑な構成で、プロのサウンドという感じがします。

 作詞の三浦徳子さんも「みずいろの雨」が出世作となり、79年にはシティポップ作品松原みき「真夜中のドア」も書いています。80年松田聖子の作品に続き次々にアイドルの作詞でヒットを出します。

 当時院長は中学生、アイドルには興味がありませんでした。今もそれほど好きではありませんが、大人になって研究として聴くにつけ、アイドル・サウンドにおける作詞・作曲・編曲・演奏のプロ達の技巧の凝らし方が偉大だったのなあと感じます。

 皆様機会がありましたらぜひ80年代アイドルサウンドの契機となる「青い珊瑚礁」をお聴きになってください。 (2023.7.5 院長)

 

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2023年

6月

21日

梅雨ですね「みずいろの雨」

壁の飾りをかえました。

八神純子「みずいろの雨」昭和53年、詞:三浦徳子、曲:八神純子、編曲:大村雅朗

 梅雨なので雨の歌にしたのですが、実は9月発売なんですね。10月19日TBS「ザ・ベストテン」今週のスポットライト出演をきっかけに大ヒット。オリコン最高2位、60万枚まで売れました。

 八神さんて本当に歌上手ですよね。そして作曲・作詞の才能もあって。天才を感じます。そしてこの時代独特のサウンド。最近の言い方ですと「シティポップ」風なんでしょうか。聴くとあの頃の独特の空気があります。

 最近、もしかしたらその空気とは「ポプコン」的サウンドなのではないかと思うようになりました。「ポプコン」、今の人には聞きなれないかもしれません、「ヤマハポピュラーソングコンテスト」(1)の略称です。都会的でおしゃれでスマートで色んな分野を取り入れた感じのサウンドです。対極にあるのはロック、ロックンロール、ハードロック、リズム&ブルース、ソウル、歌謡曲、演歌です。こういうコテコテな要素ではない、きれいなサウンドがポプコン的という気がします。うまく一言で言い表せずスミマセン。

 さてこの曲のポプコン色は八神さんの経歴をみると明らかです。昭和49年(16歳)でポプコン優秀曲賞、翌年もポプコンで優秀曲賞に入賞。昭和53年1月にプロとしてレコードデビュー、デビュー当初からネム音楽院(=のちのヤマハ音楽院)出身の選抜メンバーで構成された専属バックバンドを率いていたということです。また編曲の大村雅朗さんはネム音楽院(ヤマハ音楽院)出身、ヤマハ音楽振興会に入りポプコンやコッキーポップ用の楽曲アレンジなどに携わっています。やはりポプコン色濃厚です。八神さんのヒット作(ポーラスターやパープルタウン、Mrブルーなどの)も編曲されていますね。

 ポプコンに受賞し、デビューした方々(2)をみると何となくあの頃の雰囲気が思い出されます。ポプコン・サウンドとヤマハ系列、あの時代の一大分野と言っても良い気がします。誰か音楽雑誌などで分析研究してくれんかな。

 皆様、梅雨で家にこもりがちの際は、ぜひ「みずいろの雨」ポプコン・サウンドをご鑑賞ください。(2023.6.21 院長)

 

(1)Wikiより:ヤマハポピュラーソングコンテストは、ヤマハ音楽振興会の主催で1969年から1986年まで行われたフォーク、ポップス、ロックの音楽コンテストである。第6回からはアマチュア向けのプロへの登龍門として開催されるようになった。グランプリ優勝者には自動的にレコードデビューが約束され、世界歌謡祭の出場資格を得ることができた。

(2)Wikiより:谷山浩子、八神純子(1974年)、渡辺真知子、中島みゆき、因幡晃(1975年)、佐々木幸男(1976年)、世良公則&ツイスト、安部恭弘(1977年)、佐野元春、長渕剛、円広志、大友裕子(1978年)、チャゲ&飛鳥、クリスタルキング(1979年)、Side by Side(伊丹哲也、十川知司)(1980年) 、雅夢(三浦和人)、きゅうてぃぱんちょす(杉山清貴&オメガトライブ)(1980年)、伊藤敏博、アラジン(高原兄)(1981年)、あみん(岡村孝子)(1982年)、TOM★CAT、辛島美登里(1983年)

 

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2023年

6月

07日

宝塚星組 1789-バスティーユの恋人たち-

宝塚星組 1789-バスティーユの恋人たち- 2023.6.2~7.2 宝塚大劇場

壁の飾りをかえました。

 オリジナルはフランスのロックオペラです。宝塚でも2015年月組で初演されました。これを歌上手の礼真琴さんが演じるとなると大変期待が高まっていたわけです。

 しかしながら6/2に開幕したものの、2日目から休演になってしまいました。6/15まで休演が決定しているそうです(6/7時点)。

 出演者体調不良のためということです。みなさん無事に回復され、また舞台に戻られることを願っています。

 うーむ、しかし私がとっていたチケット3回分がバッチリ休演期間に重なっているではないか!ぜひ観たかった、残念なり。何かの機会で後半または東京など観劇したいところです。 (2023.6.7 院長)

 

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2023年

5月

24日

ダブルトラック「ロール・オーバー・ベートーヴェン」

壁の飾りをかえました

The Beatles "Roll Over Beethoven" 1963年 作曲作詞Chuck Berry

2枚目のLP"With The Beatles"B面1曲目です(1)。ビートルズのオリジナルではなく、チャック・ベリー御大の作です(1956年)。ビートルズはレコードデビューする前からライブでレパートリーにしていました。62-63年頃のライブではジョージのテーマ曲になっていました。ジョージの歌にギターソロですからファンにはうれしい一曲です。イントロのギターが始まると客席が熱狂する光景が映像に残っています。ライブではリンゴのドラムもポールのベースもノリノリなんですよね。

 一方レコード録音を聴くと、ライブに比べて随分おとなしい印象です。ジョージは結構クールな感じで歌っていますね。でも演奏に負けない厚みのあるサウンドになっています。これがダブルトラック(オーバーダビング)の効果です。つまりはじめに録音した歌にもう一度同じ人の歌を重ねるのです。このボーカル二重録りは当時画期的なアイデアだったと言われます。同時期62-63年の他のポピュラー音楽と比べれば一聴瞭然です(2)。単一録音またはエコーでふくらましたサウンドとは違います。当時これをやってるグループはほとんどないはずです。この曲でははじめのトラックで演奏と歌を一発録りし、次に歌とハンドクラップ(手拍子)を重ねているようです。なおこのLPでは”All my loving”でポールが自身でハモりをつけています、またジョージの"Don't bother me"もダブルトラックです。録音の工夫をチェックするのはビートルズ鑑賞の醍醐味ですね。

 この曲他にも魅力がたくさん詰まっています。ジョージのギター・ソロはもちろん、ポールのベース、ジョンの正確なリズムギター、リンゴ・スターのドラム、賑やかなシンバル(3)、そして切れのあるホットなフィル・イン、どれもビートを感じますね。

 ビートルズを語るとつい熱くなってしまいすみませんです。LP”with the Beatles”には初期ビートルズの魅力がたくさん詰まっています。機会がありましたらぜひお聴きください。(2023.5.24 院長)

 

(1)日本では写真のようにシングルで発売されました

(2)ロックで初めてダブルトラックを使ったのはバディー・ホリーと言われています。ビートルズ憧れのミュージシャンですね。"Words of love"で使われています。

(3)オープン・ハイハットかもしれません。でもライブ映像をみるとシンバルを叩いていますね。リンゴはシンバルの端をスティック中間部で叩くのが特徴で、ジャズっぽくチンチンと鳴らすのではなくシャンシャンという音色です。

 

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2023年

5月

03日

雪組「ライラックの夢路/ジュエル・ド・パリ」

院内の飾りをかえました。

宝塚雪組「ライラックの夢路/ジュエル・ド・パリ」

 トップ娘役夢白あやさんの大劇場お披露目公演です。

 貴族ドロイゼン家の長兄ハインドリッヒ(彩風咲奈)はドイツに鉄道事業を起こそうとする、当初は家のために始めたが、やがて国家と国民のため事業をやり抜きたいと使命感を持つ、多くの障壁を乗り越えていく。一途な気持ちを持って前進する役は彩風さんによく合います(1)。

 そして新トップ娘役の夢白あやさん、本当にかわいい。そこにいるだけで華がありますね。一方、前の宙組からもそうですが、芯の強い女性役を演じると存在感があるのです。しばらくこのトップコンビが楽しみです。

 この劇は多くのテーマが含まれているので1回の観劇だけではなかなか散漫な印象になりそうですが、それぞれのテーマは面白くて結構入り込んでしまいます。

 貴族ドロイゼン家の兄弟の結束。小国の集まりだった旧システムのドイツから統一ドイツ国に移行する時代背景。工業化のプロセス。鉄道事業に必要な技術力と資金調達法の工夫(2)。また女性の生き方と女性の自立とは何か。そしてハインドリヒとエリーゼの恋。長兄ハインドリヒと次男以下と立場の違い。などなど。

 朝美絢さんのカッコよさ、深い演技も見どころですし、和希そらさんの軍服姿と歌もいい。縣千さんは鉄職人の役どころ、鉄工所場面ではすばらしい踊りが見どころです。

 ショーは「ジュエル・ド・パリ」、藤井大介先生のショーらしく派手な味付け+要所に男役の女装あり。和希そらさんのクレオパトラは腹筋バキバキです、歌唱も素晴らしいですねー。中詰めフレンチカンカンは大規模、そして男役重鎮までカンカンに参加。ショー全体としてはパリ関連の歌が多く、曲自体は古くさいかもしれぬがダイスケ先生風味でアレンジの妙です。

この日のベース担当は院長が好きな梶山伊織さん、グルーヴあふれるビートを弾くベーシストさんです。バスティーユの場面、イントロはキャピトルズの”Cool Jerk”(1966年)を彷彿させる、身体の内側からリズムが湧き出てきそうなリズム!しかしそこからフランス国歌ラ・マルセイエーズに移るという。70-80年テイスト楽曲あり、ラテン曲ありカッコイイぜ。

フィナーレ・エトワール音彩唯さんがスゴイ迫力でした、後になるほどテンションが上がる、不安感なし泰然自若、堂々の独唱、一聴の価値あり!

見どころたくさん雪組の舞台、皆様ぜひご覧ください。(2023.5.3追記5.19院長)

 

(1)前作「蒼穹の昴」の梁文秀役、2017年「ひかりふる路」のダントン役

(2)作・演出・振付の謝 珠栄先生が公演プログラムで『ドイツ工業化における鉄道業』(大阪大学経済学部、鴋澤 歩(ばんざわ あゆむ)教授)という本を読んで本作品を書こうと思った、と仰っています。さらに別のページでは鴋澤先生による、19世紀のドイツ国内事情と産業発展と鉄道事業開発について解説が掲載されています。これはかなり勉強になります!ぜひご一読されると劇の理解が深まると思います。

 

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2023年

4月

19日

ジョンの三連符"All My Loving"

The Beatles "All My Loving"1963, Lennon-McCartney 

 三連符シリーズ3回目です。有無を言わせぬ名曲です。どこが三連なのかというとジョンレノンのリズムギターです。

 ロッカバラードと違ってかなり速い、6連だと言う人もいますね。そして1番目と4番目にきっちりアクセントをつけて正確です。ものすごくドライブしています。作曲はポールなのですが、ジョンの三連符ギターがあることでスゴク情熱度が増すのです。

 ギターはリッケンバッカー325です(1)。ギブソンだと重く粘い、フェンダーはキラキラしすぎ、やはりこの三連はリッケンバッカー独特の乾燥した音色がイイですね。楽譜やライブ映像をみると1-4弦しか弾いていないようです。確かにこの速さと軽さを出すには低音5,6弦は不要です。

 さてこの曲は聴きどころがいっぱいあるのです。ポールのランニングベース、楽譜だけみるとただの四分音符ですが4ビートスイングリズムです。リンゴのドラムはシャッフルビートでこれもスイングっぽい感じです。ジョージのソロ演奏はチェット・アトキンス風のカントリーギター(2)。そしてコーラスワークもカッコいいんですよ(4)。どれもこれも溶けあって名曲になったのですね。

 皆様"All My Loving"をぜひお聴きください、そして耳をすましてジョンレノンの三連符ギターにご傾聴ください。(2023.4.19 院長)

 

(1)2枚目の写真。30年前たくさんバイトして買いました。最近はめっきり弾かなくなりました。

(2)ついでにジョージのギター機種はグレッチのカントリージェントルマン。この当時ジョージはカントリーギターの名手チェットアトキンスに憧れていたそうで、同じ機種を使っていたといいます。わかるわかる、ファンなら同じ楽器買いたくなりますよね。⇒(1)もそれです。

(3)気付いた方もいるかもしれませんが、ジョンのギターパート以外はけっこうシックな曲構成になっているのです。ここにジョンの三連符ギターが加わり、ビートと情感が与えられたのですね。

(4)当時ビートルズ得意の録音技術、ダブルトラック(同じ人が2回ダビングで重ねて録音すること、音が分厚くなる)が使用されています。ポールのメインボーカルがダブルトラックです。

 

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2023年

4月

05日

宙組トップスター真風涼帆さん

2回連続ですみません

 敬愛するトップスター真風涼帆さん、今回作品カジノ・ロワイヤルで退団されます。スーツと黒燕尾が似合う、立ってるだけで絵になるカッコイイ男役さんです。恵まれた体格そして雰囲気。よく、男役らしい男役、と言われます。アイドル的、王子様的なスターではなく、カッコよさ、重厚さが魅力のスターさんです。(星組若手時代はどうやら王子様路線で売り出そうとしていて、宙組に組替え後重厚路線にシフトしたように思います)独特のセリフ回し、仕草、歌唱、この真風スタイルももう見納めかと思うと惜しまれます。今後この男役芸を継いでくださる方はしばらく出ないのでないかと思います。

 5年7ヶ月のトップ在任期間は平成以後3番目の長さだそうです。この間合計17作、うちコンサート2作とスヴィッツラハウス以外の14作観に行けました。あれもこれも楽しかった。芝居は「男の友情」と「正義」がテーマ、そしてなぜか多い「ロシアもの」、やはり真風さんと言えばこの系統でしょう。そしてショーは「黒燕尾」「ギラギラ」「大人」が似合いますよね。

 観れるのもあと数回かぎり。宝塚というのは誰もがいつかは退団しなければならないのだがやはりさびしいです。 (2023.4.5 院長)

 

カテゴリ 宝塚歌劇 

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作品の思い出 長くてすみません

(宙組トップスター前夜くらいから)

(-2)2017年2-4月『王妃の館』フランス国王ルイ14世(の霊?)、重厚な役が似合う。朝夏さん退団のときルイ14世のセリフを使った。『VIVA! FESTA!』宙組名物「ソーラン宙組!」が生まれた瞬間です、真風さんの「ドッコイショー」の迫力は忘れられません。

(-1)17年8-11月『神々の土地』フェリックス・ユスポフ、男の友情に泣いた。ロシア物。『クラシカル ビジュー』前トップ朝夏さん退団公演。真風さんが朝夏さんを持ち上げるリフトに驚き。朝夏さん退団さよならショーでは真風さんが男泣きをこらえるシーンあり、感動しました。

(宙組トップスター就任)

(1)18年1月『WEST SIDE STORY』プレお披露目。有名ミュージカル。純粋な心を持つ若者トニー役。抽選で真風さんサイン色紙が当たったのも良い思い出。

(2)18年3-6月『天は赤い河のほとり』カイル王子、大劇場お披露目公演、2番手芹香さんとのバディ感あふれる劇。『シトラスの風-Sunrise-』アモールでは真風、芹香、愛月、星条4名の重厚な男役達が銀橋渡りで壮観、明日エナジー、サンライズと名曲を迫力の真風節で歌う!

(3)18年10-12月『白鷺の城』和物ショー、陰陽師・武将・江戸祭禮の男を演じる。『異人たちのルネサンス』ダ・ヴィンチ、好青年役。芹香メディチと対決。

(4)2019年2月(博多座)『黒い瞳』ニコライ、愛月プガチョフと男の友情劇、泣きました!ロシア物。『VIVA! FESTA! in HAKATA』再びソーラン節、博多座、客席降りでは地鳴りのようなグルーヴ、観れてよかった。

(5)2019年4-7月『オーシャンズ11』院長が最も好きな作品。ダニー・オーシャン役、セリフも仕草も衣装も最高にカッコイイ。1幕終わりの後ろ姿、背中で男役を演じる姿。2幕ラスト客席後方から現れる真風さん。通路真横を通り過ぎたのが忘れられない。芹香ラスティと男の友情+相棒劇も見どころ。好きなセリフ「25ドルのチップを6枚」「元気出せよ、まだ1か月あるぜ!」

(6)19年8-9月、『追憶のバルセロナ』男の友情劇、スペイン貴族の子息で軍人でもある真風フランシスコと芹香アントニオ、そして瀕死のフランシスコを助ける桜木ロベルトの友情に感動。『NICE GUY!!』(全国ツアー)スーツ、黒燕尾が似合う。客席降りで真風さんとハイタッチできたのもいい思い出。

(7)2019年11-20年2月『El Japón(エル ハポン)-イスパニアのサムライ-』 和洋折衷劇。剣士蒲田治道、剣の道を極めんとする求道者の役が似合う。芹香アレハンドロとの友情にしみじみ。剣の闘いシーンは迫力。『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』藤井大介先生作、ウィスキーをテーマにしたショー。登場シーンからカッコ良すぎ。ギラギラ衣装が似合う。男役真風涼帆の魅力がたっぷり詰まった名作。

(8)20年8-9月『FLYING SAPA-フライング サパ-』オバク役、数か月コロナ休演から再開の作品。宝塚に珍しいストレートプレイ、ウエクミ先生の作品は難解だった。

(9)20年11-21年2月『アナスタシア』ディミトリ。詐欺師だが純真な心を持つ好青年役。これもロシア物。

(10)21年4月『ホテル スヴィッツラ ハウス』 ロベルト・フォン・アムスベルク。コロナ休演でこれだけ観れなかった、残念。DVDで観劇。

(11)21年6-9月『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』シャーロック・ホームズ、名探偵で英国紳士で理知的かつ正義感あふれる男。サイコパス的な悪役芹香モリアーティと対決する。剣術の心得があったり地下組織で世を征服する計画などは「カジノロワイヤル」に引き継がれる。『Délicieux(デリシュー)!』

(12)21年11-12月『バロンの末裔』エドワード/ローレンス2役、貴族的な潔さでダンディに生き抜く姿、真風さんの魅力が出ている。『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』再演、これ観たくて福岡まで行きました。

(13)22年2-5月『NEVER SAY GOODBYE』 ジョルジュ役、正義感と友情を演じる。

(14)22年8-11月『HiGH&LOW-THE PREQUEL-』山王連合のリーダー、コブラ役、彼らの正義を貫く。芹香ロッキーとは敵同士だが友情もある。潤花ちゃんとのラブストーリーが爽やか。『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』退団を示唆するシーンあり泣けます。

(15)23年3-6月『カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド〜』ジェームズ・ボンド役。退団作。前回ブログ参照。これもいわばロシア物。

2023年

3月

15日

宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル」

宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル」

 宙組トップスター真風涼帆さん、潤花さんの退団公演です。

 007カジノ・ロワイヤルの宝塚版、原作や映画とは異なる話に作られているようです。歌で話を進めていく形式で楽曲が多いです。話はあまりシリアスでなく、戦闘やアクションも過激ではありません。コメディー要素が多く、過去作品のパロディがたくさん出てきますから、宙組を観てきたファンは感慨深いです。純粋にエンタテインメントとして楽しめる作品です。3時間があっという間ですよ。

 とにかく真風さんの男役を存分に楽しめる作品です。スーツ、タキシード、トレンチコート、革ジャケット・・・と真風さんのためにあるような衣装もカッコイイですし、シャンパーニュ、マティーニ、シガレットが似合う。台詞も歌唱も真風節が満載。そして銀橋にて斜め45度で眼をカッと見開き見栄を切る真風ポーズ。どれも円熟の男役芸集大成です。真風さんはよく「宝塚らしい男役」と評されます。これだけ重厚なトップさんはこれからしばらく出ないのでないかと思います。しっかり眼に焼き付けておきたいと思います。

 潤花ちゃん、雪組時代にはやや目立たなかったかもしれないが、宙組に組替えし真風さんの隣にきて輝きが増しました。魅力が開いた大輪の花です。潤花ちゃんの陽パワー本当に可愛かった!宙組に来て本当にいい役を務められました。

 二番手芹香さんは敵役ル・シッフル、いつもながらものすごい迫力の演技です。ラスボス感を演じておられます。懐かしのラスプーチンまであります!もちろんいつもの芹香さん熱唱も聴きどころです。

 寿つかさ組長(すっしーさん)が今回退団されます。宙組創設時から在籍され、そして長年組長を務められました。すっしーさんの見せ場が随所にあって大きな拍手が上がりました。

 紫藤りゅうさんも退団、今回はCIA諜報部員を演じます、これがノーブルな空気の紫藤さんにぴったり。真風さんをスマートに手助けする場面や、カジノの勝ち金でゴージャスに遊ぶなど紫藤さんのカッコよさが出ています。3国、英(真風)、米(紫藤)、仏(瑠風)の諜報部員の並びはスタイリッシュで高身長な宙組らしいシーンです。

 本作品、その他も見どころ沢山です。若翔りつさんのツヴァインシュタイン博士、マッドサイエンティストの役作りと歌が魅力。そして優希しおんさんキレキレな踊りは眼が離せません!ぜひ注目してください。

 皆様機会がありましたらぜひ宙組の舞台をご覧ください。(2023.3.15院長)

いつもは各組のポスターを飾っていますが、今回は院長が敬愛する真風さんの過去作品を並べております。

 

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2023年

3月

01日

三連符の魅力Only You, Great Pretender

壁の飾りをかえました

ザ・プラターズ”Only You”1955年作曲・作詞Buck Ram

 三連符ってどんなの?と聞かれたら、日本の曲だと津軽海峡冬景色、洋楽なら”Only You”でしょう。

 これこれ!このイントロですよ。この三連符から盛り上がりますね。リード歌手のトニー・ウィリアムズ、ファルセットが本当に気持ちよく抜けます!そしてきれいなドゥーワップコーラス。バックの演奏でずっと三連符が鳴っているんですね。ヴォーカルは4分の4で、バックが三連符。ハチロク(8分の6)とか8分の12と言われることもあります。三連符をベースにしたドゥーワップやロックやポップスのことを「ロッカ・バラード」と言ったりします。三連符って哀愁や情熱の感じがでますよね。

 "Only You"はビルボードR&Bチャートで7週連続1位、全米ポップチャート5位まで上昇し、大ヒットしたそうです。プラターズは続いて同じ年(55年11月)に「グレート・プリテンダー」"The Great Pretender"を発表し56年にR&Bと全米ポップチャート両方とも1位に輝きました。この曲も三連符のドゥーワップでいい曲なんですよ。(1)

 皆様、機会がありましたら三連符の名曲"Only You", "The Great Pretender"ぜひお聴きください。(2023.3.1 院長)

 

(1)2曲とも映画「アメリカングラフィティ」で印象的に使われていました。若いとき何十回いや百回以上観ましたからシーンを思い出します。次の曲へのつながりも、ウルフマンのDJも覚えました、懐かしいなあ。

 

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2023年

2月

15日

宝塚月組 応天の門/Deep Sea

壁の飾りをかえました。

宝塚月組「応天の門/Deep Sea」

 「応天の門」は漫画原作の舞台化です。原作はまだ完結していません。

藤原家が権力抗争を繰り広げる中、藤原多美子暗殺の謀略を菅原道真が暴いてゆくストーリーです。同時に、道真が人間的に成長する姿や在原業平の心がかわってゆく様が描かれます。テンポ速くスリリングに展開します。次はどうなるんだと観ているとあっという間にラストになります。

 月城かなとさんの道真は頭脳明晰で人文、自然科学ともに明るい。次々に謎解きを進めるさまは鮮やかです。

 唐から日本へやってきた昭姫(海乃美月)は、頑固な道真の心を変えてゆきます。姉御的存在感が海乃さんによく合います。なお道真とは一切恋愛関係になりません。

 在原業平役の鳳月杏さんは貫禄十分、コミカルな面もシリアスな芝居もなんでも演じます、歌も素晴らしい。

 よく芝居の月組と言われます、脇を固める役者さんの演技の作り込みも見どころです。朝儀の場面、藤原良房(光月るう)と藤原良相(春海ゆう)の権力抗争。言葉少なくともわずかな仕草や目線芝居だけで並みならぬ緊張感の火花がバチバチ飛ぶさまを演じます。また道真の父、菅原是善(佳城葵)の芝居も深い。過去に長男吉祥丸を失った悲しい過去を持つが故に、三男の道真を案ずる親の気持ちが伝わってきます。

 この劇、いろんな要素が絡み合って話が進んでいきます。百鬼夜行の謎の解明、藤原家の権力抗争、多美子暗殺計画の阻止、在原業平と藤原高子の恋、菅原道真の人間成長、道真の兄吉祥丸と藤原家の因縁、道真と関わることで在原業平や昭姫の心が変化。それぞれの軸で観ていくと深くて重層的だなあと思います。

 後半のショーはDeep Sea海神たちのカルナバル。ラテン・グルーヴショーでした。衣装もダンスも華やかです。私の好きな場面は、S6 Groovy Grove礼華はるが率いる若手たちのエネルギッシュなダンスです、曲はテンプテーションズのGet Readyかっこいいです。そしてS10フィナーレのベサメ・ムーチョ、シボネーとラテンナンバーから黒い瞳タンゴ・デュエットダンス。

 皆様機会がありましたらぜひ月組の舞台をご覧ください。(2023.2.15院長)

 

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2023年

2月

01日

魅惑の三連符「津軽海峡・冬景色」

壁の飾りをかえました。

石川さゆり「津軽海峡・冬景色」昭和52年作詞:阿久悠、作曲:三木たかし

 まだまだ寒い日が続きますね。北国の歌を聴いています。石川さゆり19歳時の歌唱です、上手いですね~!若いのにこんなに力強い情感が出せたなんてスゴイです。

その情感は歌の力以外にも、曲にいろんな仕掛けがあるからなんですね。

 まずは特徴的な三連符リズムです。うえの/はつの/やこう/れえしゃ/おりた/ときか/らー、見事に3個ずつです。大アクセントを奇数節の1個目、中アクセントを偶数節につけます。三連符はアクセントがないとダラっとしてしまいます。これ洋楽でいうロッカバラードのリズムです、昔のリズム&ブルースやオールディーズによく使われました。三連符は強い情念を伝える力を持っています。

 メロディーですが、この曲は演歌ということにはなっていますがヨナ抜き(2)ではありません。Aマイナー(イ短調、主音ラ)です、白鍵盤をラから順番に弾くとこれになる。7番目の音ソは1回だけ出てきます、ただしソ#です(3)。ヨナ抜きほど日本風ではないメロディーでちょっとメランコリックな洋楽的な響きも残すのです。そしてコード進行が凝っていてツー・ファイブ・ワン(IIm7-V7-I)進行が使われています。ジャズでよく使われると言います。「青森駅は」の次「雪のなか」、最後の「津軽海峡冬景色」のところがBm7♭5→E7→Amです。定番のIV-V-I進行(4)の最初のIVを代理コードIIにしたヤツです。定番のIVよりもちょっと不安定さがあってカッコよくなり、さらにルート音がシ→ミ→ラと5度ずつ下がることによって、IV-V-Iより力強さがでるとされています。この進行で曲が伝えたい情念がさらに強く表現されるのです。

 作曲の三木たかし先生は、三連符、西洋音階の短調、ツーファイブ進行など様々な技巧を盛り込んでおられるんですね。そして阿久悠さんの作詞と石川さゆりさんの歌唱がみごとに溶け合った名曲です。

 今ではいわゆる「演歌の代表曲」的に思われていますが、こうやって聴くとなかなか洋楽のエッセンスも取り入れていてカッコイイなあと思います。そういえばこの時代の石川さゆりさんはドレスで歌っていました(5)。歌番組、レコード会社、芸能事務所も「石川さゆりは和服演歌とは一線を画しポップスで売り出す」という認識であったのだろうと推測されます。

 皆さま機会がありましたらこの三連符の名曲ぜひお聴きください。(2023.2.1院長)

 

(1)その昔ギターを練習したとき初心者向けのギター教本で、三連符のページで「津軽海峡冬景色のリズムです」と書いてありました。誰もが歌えるほど浸透していたのです。

(2)ヨナ抜き音階:前回ブログ「函館の女」を御参照ください

(3)ちなみに7番(ソ)を#半音上げた短調は和声的短音階と言って、主音(ラ)で終止させる力を強める働きがあります、だからフィナーレの「ふゆげーしき」が「し(ソ#)き(ラ終止)」となっているのです。

(4)カデンツ進行:安定して終止させる和音進行、数種類定番がある。Iは主音のドが根音ドミソ和音これが最も安定、IVは4番目のファが根音ファラド、Vは5番目ソが根音ソシレ。

(5)昭和52年2/28歌のベストテン、12/20FNS歌謡祭優秀歌唱賞、12/31日本レコード大賞・歌唱賞、12/31紅白歌合戦、この辺すべて洋装です。昭和63年頃までドレスで歌っている画像が残っています。

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